いまボクが取り組まなくてはならないこと 第1回「わたしたちも食事中です」休憩

 マメヒコを始めて971日が経ったことになる。ざっと2年と8ヶ月とちょっとということになるが、971日と考えたほうがボクには実感がわく。2年と8ヶ月とちょっとと済ましたくないのだ。毎日朝8時に店は開き、夜11時に営業がしまい、終電までの1時間30分の間にあらゆる後片付けをすまし、翌日の豆の吸水をすまし、売り上げの確認をすまし、100円足りないだの、630円多いだのに落ち込んだりいらいらし。疲れた身心は終電を意図的に逃すこともしばしばで、けれどタクシー代はもったいないからと朝まで話す。こともある。ちょっと前まではボクが車でスタッフの家まで送っていた。スタッフがどこに住みどんな間取りで暮らしているのかをボクは全部知っていた。そのまま明け方になり事務所に戻ってポストを確認すると、届いた書類のほとんどは請求書で、事務所にかかってくる電話のほとんどは、求人にお困りではないか、お困りでしょう、お安く掲載しますよという営業だ。ごもっとも。お見通しでスタッフの入れ替わりは、激しい。人が入って出て行く。仲間が去る。それは見知らぬ港で辛苦をともにした船員が下船する寂しさだ。そして、やりきれなさ、腹立ちがボクのなかにある。誰にともない腹立たしさがある。残るスタッフは希望に満ち満ちた未来を選んだ仲間を必ず喝采する。おめでとう。お幸せに。がんばって。またいつか。遊びに来て。しかし船が港を離れるとき、乗船を続けると決めたスタッフの顔には、ワタシモココデ下リナクテヨカッタカシラという不安や焦りがあるのをボクは見逃してはいない。誰ひとり去るものに憎まれ口をぶつけない。明日の自分がそこにいるからだ。誰かが欠けたマメヒコは、陸の人と船の人の手をすり抜け未練たらしく港に浮かぶ紙テープだ。そうした悲喜こもごもを971日繰り返したのが今日であり、あしたまた新しい喜怒哀楽がやってくる。

 船員の時間のほとんどすべてがマメヒコに費やされている。誰もいないアパートの安普請の部屋のストーブはなかなか温まらない。布団にもぐり温まるのを待ちながら疲れて寝てしまうのは毎夜だ。眠れぬ夜は電気ストーブの赤い明かりが話し相手だが、電熱で悲しみは消えない。 

 今、マメヒコで取り組まなくてはいけないことはなんなのか。ボクはそのことをいつも考えている。
 
 シェーンハイマーという学者の実験結果だという。ねずみの腸に牛乳から採ったタンパク質を入れたところ、腸が懸命に働く様子が見えたと。ところが、牛乳と同じ成分に合成した化学物質を入れてもねずみの腸は反応しなかったと。だから。「食事」は粗末にしてはなりません。「食べる」という行為を粗末にしていてはいけません。「食べる」とはエネルギーの補給のためではなく、人として日々の細胞を刷新するための大切な行為なんです。と辰己芳子さんがどこかでおっしゃっていたのを聞いて、とても共感した。ボク自身出来る限り食事は気をつけている。出来る限りだから自慢できるような食生活では無いけれど、気持ちが沈んで何もやりたくないときは食生活を改めればなんとかなると思う。スタッフにいつも気持ちを前向きに取り組みなさいとしかっている。そうしないとマメヒコ丸は沈没するからだ。しかし、スタッフはいつもどこが青白い顔で皮肉に笑うばかりだ。そしてそういうスタッフの食生活は惨憺たるものである。飲食に従事していてお客さんの健康を考え、豆を煮ているスタッフの食生活が惨憺たるなんて悪い冗談ではないか。ところがカフエを始めてみればわかるが、スタッフの不規則、不摂生はお店の形態からもうどうしようもない。不規則な長時間労働は、3食外食にならざるを得ないのだ。食への意識を高めましょうと意識改革を訴えるのは簡単だが、たぶんボクらにはあまり解決にならない。とにかく時間が無いのだ。食べる時間も場所もお金も無いのだ。

 そこでいまボクはこう考えている。4月からマメヒコの営業時間を一部変えようと思います。毎週火曜日と木曜日の昼12:30から13:30までと、18:30から19:30を「わたしたちも食事中です」休憩とします。そしてスタッフも店内できちんと食事を摂らせてください。和食かもしれないし、パスタかもしれません。お味噌汁はきちんとだしから取ります。ごはんもきちんと炊きます。出来合いのものは極力買いません、少ない品数でもいいからスタッフがきちんと作ります。はし置きもきちんと用意しましょう。バイトも社員も無くきちんと店内で食卓を囲みたいね。そういうことを考えています。わかっています。これはお客さんにとってはハナハダ迷惑な提案です。

けれど。

スタッフは機械ではないのだ。1週間に1度給油すれば走る自動車ではないのだ。スタッフの細胞も日々の刷新が必要としている。マメヒコならなおさらだ。だから。その間、完全にクローズするべきか。それともスタッフに、すいません1時間食事するのでご迷惑かけますがそっとしておいてくださいと、居るお客さんに理解を求めるほうがいいのか。まだわからない。でも火曜日と木曜日といわずいずれ毎日その時間はマメヒコは「わたしたちも食事中です」休憩をやりたいしやる。いつか定着してお客さんと一緒に食べることがあっても楽しい。

 始めるとなれば色々な問題が起こるだろう。スタッフから反対の声が上がるかもしれない。それでもいい。ボクがやると決めるか決めないかだけだ。ボクが考えていることを実行するかしないかだけなのだ。

そういうことを少しだけ紹介したい。

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