いまボクが取り組まなくてはならないこと/第3回 ストーリー第一主義

 できるだけのことは公開したいと思っているし、公開しても恥じない店でありたいと思ったりする。マメヒコで使用している食材のこと。

 恥じない店なんて、昔かたぎな言い回しだが、ほんとにそう思う。恥ずかしいのはいやだ。なんか恥ずかしいなと思うことが多い。

 餃子の一件があって、飲食大手もWEBで食材の生産地を公開し始めている。でもなと思う。公開されてるリストを眺めてなんか憂鬱な気になる。こんなんなら公開しないでくれてたほうがましじゃないかと思う。体裁を整えているだけでようにしか見えず恥ずかしい。

 当店の鶏肉はタイ産で、豚肉はメキシコ産で、牛肉はオーストラリア産で、エビはインドネシア産で、なんちゃらはなんちゃら産で。つまりは中国産を使っていないから安心しろということなのか。なんのために公開しているのかよくわからない。アメリカ産牛肉の輸入が全面禁止になったとき、仙台の牛タン店が反対したというニュースを聞いたときも、良いとか悪いとかは知らないが、なんか恥ずかしかった。

 風が吹けば桶屋が儲かる。もう何がどうなってて、どうしてそうなるのか世間知らずのボクには、ちっともわからない。

 年明けにあるヒトとマメヒコでお茶をした。そのヒトは日本で農業をビジネスとしてきちんと経営され、一方で南米や世界各地から日本に野菜や穀物を輸入するビジネスも始められている。その方が、国内産が素晴らしいというのは幻想ですよとお話しされて少し驚いた。国内産がが良いとずっと思っていたのである。マメヒコも豆やチーズ、ワインなどはあえて国産にこだわっている。たとえば南米で農業に取り組んでいる人たちは実に真摯に農業に取り組んでおられるそうである。農業に命を懸けている凄みが日本の農家よりあるというのである。頭が下がるような努力を弛まず取り組んでいるというのだ。9時5時では農業は出来ませんから。もっとも、と一息置いて、彼らに農業技術を教えているのは日本人なんですけどと結んだ。なんか複雑な気持ちだ。おみやげに南米の日系人が作ってるというお豆を袋いっぱいにいただいたがとてもおいしかった。

 井川さん、あっちはね、土が持つミネラルがなんといっても豊富で、日差しも強い。だから完全無農薬でも化学肥料に頼らんでも十分作れる。ほんとに素っ晴らしいびっくりするような野菜を作ってる。あすこはね、星がきれいなんだ。天の川が落ちてくるようですよ。今度是非、アンデスでトマトをご馳走する。食べたらびっくりしますよ。星の下で食べてもらいたいな、あのトマト。

 その話しを聞いてるときから、もうすっかりアンデスのトマトを食べてみたくて仕方ないのだ。どんなにかおいしんだろう。日本の色だけ赤くて味気ないトマトより美味しいに決まっている。飛行機に乗ってでもそのトマトを食べに行きたい。なんて思っているのだ。外国産に対するちょっとイヤだなという自分の考えなどその程度のことで簡単にひっくり返ってしまう。馬鹿だ。

 ボクらのまわりに取り巻く渦巻きのような問題は加害者も被害者もどこか同じで、真剣に考えるほど何も言えなくなる。発言をするには自分のことを棚に上げなければなにも言えず、冷静であればあるほど無口でいるのが自分を正常にしておける唯一の術だ。

 情報を発信するだけの仕事なら国内自給率が低いことは問題ではないかという提起でエンドロールを流せばいいが、マメヒコをやっているとそうもいかない。マメヒコはなにかを選択しなくてはならない。マメヒコはバーチャルカフェでもブログでもない現実なのだ。

 そこで考えたくないことを考えて、出した結論はこうである。国産か外国産などどうでもよい。そこにこだわるのは本意ではない。オーガニックにこだわるとかマクロビオテックの思想を取り入れるというのもどこか窮屈だ。とにかくボクを含めてスタッフみんなが美味しいと思うものをマメヒコでは出す。そして美味しいものはきっと身心にもよいと信じることにする。そしてなにより、すべてのものがマメヒコにあるべきストーリーがあること。このことを一番大事としよう。価格だけではない。思想だけでもない。ストーリー第一主義。そう考えれば生産地などどこでもよい。日本だろうと国内だろうと誠実に取り組んでいる生産者がいれば、そのヒトのヒトとなりを知って好きになってしまったらそれをマメヒコで使う。仕入れ価格が少々高くても構わない。高く売ればいいだけのはなしだ。たとえば、こういうこともある。生産者は流通の過程でわからない。けれど、この商品を時間内にきちんと届けようとしている配達員がいる。商品のことが好きで配達している。その配達員をボクらが好きになってしまったら、そこから商品を取る。

 得策でも秘策でもないが、ストーリーの無いもの、ヒトは使わない。今までもそうしてきたし、これからもそうしてゆく。

 具体的に、マメヒコではこれから随時WEBを通してマメヒコで使う食材の生産者やそこにかかわるヒトを紹介してゆく。豆や珈琲、チーズ、アイスクリーム、ワインにいたるすべてをストーリーで紹介できたらきっと面白い。あらゆる手の内を明かすことになるけれど構わない。これはお客さんにとってもスタッフにとっても楽しいことだ。北海道の僻地に住むしわくちゃの爺さんが腰を曲げて作った白花豆だと知っているのと、袋詰めでFAX出したら届いた豆では豆を煮る楽しさが違う。その爺さんが死んだ翌日は、豆を煮る作業に追悼の念が込められるかもしれない。それは不謹慎なたとえだか、きっと楽しい。全部を取材するのは大変な労力と時間が必要だから、ひとりひとつと決めてスタッフに取材させに行ってもいいかもしれない。もっと進めば、WEBで取り上げたヒトにマメヒコに来てもらいたい。そして自分の作った作物、届けた商品、売った商品が、ひとりのヒトの口に入り咀嚼する瞬間を見てもらう。これもまた楽しい。その顔写真はマメヒコにかかわるすべてのヒト。つまりボクらにとってどれだけの意味を持っているか。すごいに決まっている。そのためにみんな体力をふり絞って働いているのだ。お客さんの口に入る瞬間ばっかりを望遠カメラでこっそり撮って「一口写真館」というコーナーを作ろう。お客さんの一口目の写真がダーッと並ぶ。笑い顔、渋い顔、無表情。食べること、作ることの意味が浮かび上がる。だれか撮ってくれるカメラマンはいないか。

 産地を表示してるからご安心くださいねと言うことは、ボクにとってはなんとも恥ずかしい。ボクの恥ずかしいは、よくわからない、よそのヒトとずいぶん違うよ。って言われる。

 ほんとはこういうのをこういう風に書いているのもとっても恥ずかしい。けど恥ずかしいよりも楽しいがいくらかでも上回れば、それを優先してしまう。ただそれだけのことだ。

Archive
カテゴリー
Youtube

IKA-HICOメンバーになるには月額1,500円かかります。「Youtube IKA-HICOチャンネル」に定期的に投稿していただきます。

ABOUT HER

エトワール★ヨシノ