ガイドについて

採用面接が続いています。

1日に4、5人、多いときはほぼ毎日面接が続きます。

ひとり1時間程度、もしくはそれ以上話すことも多々ある。
いろいろな話しを一対一でするのだけれど、
そこで、いろいろなことを仕草や言葉尻から見る。
というより見えてしまう。

ボクが相手に持つ第一印象は経験的に絶対に外れない。

ぱっと見たその印象がすべてで、
そのあと話すのはその印象を実感に変えるためであり、そして疑問に変えるためである。
いくつか立ち入った質問する。
あぁなるほどと疑問はやがて実感から確信に変わる。

面接もそろそろ終わりの段になって、そのまま黙っていようといつも思う。
余計なことを言うまいといつもいつも思う。
ここでニコニコ終わらせて、あとは不採用の通知を一方的に送れば手続きは済む。
けれど、結局いつも、余計なことをしゃべってしまう。

ボクから見た印象、そして恐らくあなたが今悩んでいること、
そしてそれに付随するあなたの性格、または生い立ち、
立ち入ったことまで、自分の確信を正直に話してしまう。

しばらくみんな絶句して、全部当たってます。とうなだれる。
そして、力なくどうしてわかるんですか。という。
そして言い当てられた悔しさからか、大概、泣きだす。
ボクの面接で泣く率はたぶん80%に近いはずである。
悪趣味だが、趣味ではない。

泣かれてはとても困るのである。

泣いたほうはしばらくして、
「わかりました、すべてあなたのおっしゃるとおりです、目が覚めました」
とすっきりした顔をし、結局、採用に至らないことが多い。(そのまま残ることもあるが)
だから採用面接ではなく、ただの人生相談で終わってしまう。
1日中、人生相談で終わる日も案外多い。

まっすぐな線を引くとき、誰でも定規を使う。
ガイドさえあれば、誰でもまっすぐ線を引くことができる。
人生を歩くときにも、
ガイドがあれば実に便利ではないか。
自分なりのガイドとなるヒトを持っていれば、まっすぐ歩きやすくなる。

あることが起きる。
自分では考えもつかなかった、取り返しのつかないことが起きてしまう。
そういうときは慌てずガイドに相談する。素直に相談する。
そして、ガイドはある結論を提示してくれる。
そうかなぁと思う。よくわからないなぁと思う。
けど、口ごたえをしない。逆らわない。
このヒトはワタシのガイドなんだから、
とりあえずガイドの通りしたがっておこう。
ガイドを疑ってはダメである。ガイドはとにかく信用する。
信用できるガイドを作る。

そう取り決めておくほうが、フリーハンドに頼るよりよほど賢明だと思う。

なんでもあなた次第、自分の人生なんだから、あなたが決めればいい。
というのは、言う方も従う方も、バカだと思う。
使える定規があるなら(無いなら仕方ない)使えばいい、
探せばいいのにと思う。

だれをガイドにするかと言うことだけは慎重にならなくてはいけないが、
一度決めたら(みつかったら)、あとはガイドにすべて任せればいい。
そして一度決めたガイドはあまりガチャガチャ変えない方がきっとよい。
ガイドはガイドなんであって、ガイドに沿うことを恥じることないと思う。
まっすぐの線を引くのに定規を使って恥じるヒトなどいないではないか。

面接はあくまで面接であり、ボクは面接係であって無論、ガイドではない。
だから、最後は決まって
「ボクはこう思うけど、まぁ、すべてはあなた次第、
あなたの人生なんだから、あなたが決めればいい」
と言って終わる。
不採用もしくは、応募辞退となれば、そのヒトと会うことはない。
泣いたヒトと再会することは今の仕組みでは実現しない。

けれど、ひとによっては、
「いいからつべこべ言わずに従え」と言ってあげたいこともある。
その人に起こりうる苦労が想像できる。
本人も自分のことをよくわかっており困っている。

そういうケースが今日もあった。

ガイドがいて当たり前となればいいのにと思う。
きっと昔はそうだったはずである。
教師しかり、職場長しかり、仲人しかり、牧師しかり、酋長しかり。

行政とか警察とか弁護士とかがそうなっているのかも知らないけれど、
何となく違う気もする。
ガイドを探すのもイヤだし、ガイドになるのもイヤだとなってしまっているのはなぜか。

「あなたの人生なんだから、あなたが決めればいい」
と言うかたちで、ガイドもなしにまっすぐ線を引くことに
途方に暮れたヒトは一体どこに進めばいいのか。
ガイドを羅針盤と置き換えても良い。
そしてボクと面接をしさらに途方に暮れたヒトたちは今どうしているのか。

なにか良い仕組みがないものかと、人生相談が終わって
こちらが人生相談に駆け込みたくなる。

井川啓央
井川啓央
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