ルールについて

昨日、お客さんから、ひとつの指摘があったんです。

「マメヒコは好きです。好きですけど、
残念なことに今日飲んだ珈琲についてきた生クリームが、
逆さにしても垂れないほど表面が固まっていたんです。
それを珈琲に入れてみたけど、何とも残念な感じでした。
マメヒコは古いクリームを使ってるんですか。
残ったものを使い回ししてるんじゃないですか。
好きだったマメヒコだけにがっかりでした」

というメールでした。

マメヒコの珈琲ミルクはタカナシ乳業の35%純脂肪のものを
そのまま使ってるんです。
「珈琲フレッシュ」と呼ばれるまがい物のミルクはミルクだと思っていないので、
コスト高だし、扱いにくいけれど、ずっとそうしてきたんです。

フレッシュ
フレッシュの危険性

純生クリームだから、少し時間が経ってしまったり、
振ってしまったりすると、バターと牛乳に分離してしまうのは当然だし仕方がない。
分離したバターは軽いから浮いてきて膜を張り、今回のことのような残念なことになってしまう。
だから、たまたまご指摘頂いただけで、マメヒコの日常としてはままあることです。

さて、これをお店としてどうするかという話しが本題。

こういう場合、早速、スタッフ間で話し合いになります。
すると、必ず改善案というのが出てきます。
で、それはいつも決まって対処案でしかないんです。
その場しのぎのルールでしかない。

たとえば、お客さんに喚起するというルールを考えてくる。

「ミルクはしばらく置いておくとバターと水分に分離しますので、
お早めにお使いください、と店員からお客さんへ
毎度毎度アナウンスすることに決めました」とか。
そんなことできるはずがないでしょう。

たとえば、こういうこともあります。
オーダーが立て続く。すると珈琲にミルクが要る、要らないというオーダーがずらりと並ぶ。
何もかんがえてないドリンク担当は次から次へとオーダーを単純にさばいていく。

「お願いします。珈琲できました」という段になって、
お客さんがトイレとか電話とかしていて「お席外しされています」と
ホールからアナウンスが入ります。

その場合、落としたばかりの珈琲は保温されるかほっとかれる。
ミルクは冷蔵庫に入れられて、再び席に戻られるのを待つことになる。
出したとき珈琲は多少ぬるくなっているし、ミルクも多少固まってしまう。
けどそれでも出します。

そこで新ルール。
「今後お席外しされた場合、用意してあったものは廃棄し、
着席されたのを確認してから再び作り直すこと」。
そんなことできりゃ苦労しません。
混んでるときにはできるはずがない。だからこうなっている。

つまり、どんどんどんどん、できもしないルールが増えてくる。
そして、できもしないルールはできもしないので忘れていく。

とりあえずルールを作り、そして忘れていく無責任さ。

管理者である立場の店長は、そのルールが守られているかどうかしか関心がなく、
ルールをより憶えているものが、統率者の資格有りとなってしまう。

その昔、連合赤軍を捕まえる際、亀井静香、警視庁課長補佐が
容疑の見あたらない赤軍派のメンバーを捕まえなくてはならなくなって、
「そうだ、さっき公有林の木をあいつら無断で切っていました。
たから森林法でとりあえず捕まえたらどうだろう」と進言して
とにかく捕まえたというはなしがある。

http://www.jnpc.or.jp/communication/essay/e00022390/

ルールを知り尽くし機転が利いてお見事お見事、という話しですね。
その亀井補佐はいまや時の大臣、総理候補なんですから、たしかにお見事でした。

日本は法治国家であり、無法に悪法は勝る、ですから、
日本というフォルダーの中にあるサブフォルダーのマメヒコも
どんどんとルールができていって当然。

これは議論が足りないからだというひとが居るかも知れない。

けど、世の中は矛盾に満ちている。
白と黒ハッキリできないこと、グレーの領域がほとんどであり、
ルールはそれを白黒ハッキリあぶり出すことになってしまうでしょう。

どんな議論の末にできたものでもルールである以上、白黒ハッキリさせてしまう。
さもなければ、いかようにも解釈できる、もはや何のこっちゃ?ルールがいっぱいできてしまう。
色んなものの定款だとか約款だとか、あんな小さい字をほんとに読んで
同意しますのボタンを押してるヒトなんて皆無でしょ。
そしていつしか法の目をくぐることが大人になることだと子供は思ってしまう。
本音と建て前を使い分けろと。

そういうことにボクは全く共感できないし、
そういうことに随分とあちこちで文句言ってきたけど、
どうどうと馬のようにいなされてきたんです。

でもその結果として、グレーのところに存在していた人間味というのは
失われてしまったことに誰も気付いてないのかしら。

今回のことはね。
ミルクを逆さにして出ないお客さんの、その怪訝な表情を見落としてるんです。
なによりそこが悪い。

ボクがドリンクを作ってるならば、まずお客さんに出した時、
その一口飲むときの表情を見たいと思う。
どうかなって気にする。
おいしそうな顔すればよし。あれれって顔してる時は、
ちょっと話しかけに行けとホールの子に言う。

今回は、きっとしばらく浮かない顔をされていたはずなんですね。
お会計の時、満足してない顔をしてたはずなんです。
だからわざわざメールまでしてきた。

わたしのこの不満足に気付いてほしかった、
というシグナルを完全に見落としているんですマメヒコは。
そのほうがよほど恥ずかしい。

これを読んで、翌日の会議。

「今後、お客様が怪訝そうな顔をしていたら、必ずホール担当が声を掛けること。
怪訝そうな顔とは以下の通り。
・眉間にしわが2本以上たてに走っている。
・口元が左右どちらかに1センチ程度引きつっている。
・目が笑っていない。笑っていないとは以下の通り・・・」

「わかりました。今後気をつけます。このたびは失礼しました」

こんなルール作りが毎日誰も疑うことなく繰り返されて、
サブフォルダーもフォルダーもどんどんバカになっていく。

とはいえ、ボクは評論家ではないので、わかりやすいルールをみんなで作らなくてはいけないんです。

井川啓央
井川啓央
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