知らないを知るについて

近くて知らない町、台湾。

向学のためにボクは台湾へ時々来ていて、
そのたびに、あぁ、なにも知らないんだなぁ、といつも思ってしまう。

始めて来たとき、台湾のおばあさんが日本の童謡を歌うのを田舎町で聞いた。
日本に帰ってから、台湾が日本の統治下にあった時代のことを知った。

ほどなくして、再び台湾へ行ったとき、

現地のヒトが台湾語と北京語をたくみに使い分けているのを知った。

戦後、外省人、本省人という区別というか差別があって、

それがつい最近まで街の暗部に棲みついていたことをまた初めて知った。

(いや、いまなお続いているのかもしれません)

そういう無知は驚きであるから、

台湾の2.28事件をモチーフにしてマメヒコの芝居として演ったこともあった。

近くて知らない街(国ではないことも知らないヒトがいるかもしれません)が、

こんなに近くにあることはなんとなくむずかゆい。

台湾の食文化に触発されて、台湾茶を始めたり、マメヒコ飯店というものも作ってみたりもした。

今回、小さな町で、豚足を煮込んだものにそうめんを添えた猪脚麺線というのを食べた。
案外おいしかった。ここらじゃ豚肉にそうめんを合わせる。

マメヒコでやったらどうかと思ったりするが、麺が違うからうまくいかないだろう。

なにより今回、一番驚いたのは、

ずっと台湾は豚肉の町だと思っていたことが誤解だと知ったことだ。

マメヒコ飯店も「豚肉だけ」の店です、と宣言していた頃があったのは、

台湾が豚肉の町だという思い込みが後押ししていたことは間違いない。

ところが今朝、久しぶりに裏路地の薄暗い市場に独り入ってみると、

目に付くのは鶏ばかり。鶏、鶏、鶏。

台湾は猪肉ばかり食べているというのはボクの思い込みだったのである。

市場をのぞけば、鶏ばかり食べているのよ、という印象なのである。

なにも知らないんだなぁ。

鶏だってね、白いのから黒いのから、鳩みたいなのから

クジャクみたいなものまでいる。

種類の分からない色んなものが色んな形で無造作に置いてある。

八百屋の軒先のバナナだってよく見れば種類の分からないものばかり。

乾物の類に至ってはもはや知ろうという気も起こらない。

予備知識もなく、まったくなにも知らなければ、たとえ知るチャンスに置かれても、
知ろうとしないものなんですね。

頭にふたをするという感じ。

たまに違う環境に置かれると、
自分はなにも知らないということを知ってしまう。

井川啓央
井川啓央
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