森のメリーゴーランド

小さい頃から、サーカスの小さな観覧車と、遊園地のメリーゴーランドを見ると、物悲しい気分になってしまいます。どんなに回っても、それはボクらの夢と希望を乗せてどこか遠くに向かってるわけではなく。

ただただ同じところを、ぐるぐるぐるぐる回っている。

夢のように見えても、それはプラスチックでできた馬と馬車は同じところをひたすら繰り返し回ることは、子供の行く末を暗示しているようでもあり、悲しかった。

馬にまたがり、親の前を通過するたび、ピースをしたりする子供たちが、微笑ましいけど悲しい。そんな子供でした。

ほんとはさ。こんなのは嘘っぱちなんだぞ。プラスチックなんだぞ。電気で動いてるんだぞ。
生きている馬はね、もっと躍動感があってね、どこまでも遠くへボクたちを連れてってくれる。
馬の体温はとっても温かいんだ。さぁ、そんなものに乗ってないで出かけようよ。そうだボクが連れてってあげよう。さぁ、みんな連いておいでっ!。

振り返ると、みんなは、メリーゴーランドに何食わぬ顔をしてキャーキャー乗っている。
安っぽい音楽と笑い声、メリーゴーランドの光はボクの頬を照らしている。

女の子が見かねてボクのところに来る。

あのね。いかわくん。
ここは安全なのよ。パパだってママだって喜んでる。このプラスチックの馬や馬車がいんじゃないの。餌も食べないし、糞もしない。嘘だからいいのよ。アイス持って、ピースしとけば、みんな幸せなんだから、それでいいのよ。そんなにイヤなら、キミはさ、どっかで暴れ馬にでも乗って、砂漠でも知らない国にでも行っちゃえば。

かわいい女の子は、予定調和を壊さないでとたちまちボクを否してしまう。
傍らの大人たちはポツンとそれに乗れずにいる、ボクにはちっとも話しかけようとしないんだ。

ごめんなさい、ボクが馬鹿でした。

そうみんなに謝って、メリーゴーランドに乗せてもらえばいいじゃないか。そして一緒にアイスを食べてピースをしよう。

それとも。
鼻の奥の涙を飲んで、一人馬にまたがり、荒野を目指すか。目指したら最後、メリーゴーランドに乗りたかったなんて微塵も思わないことだぞ。

ボクの前で、メリーゴーランドは回り続ける。同じ場所をずっとずっと。夕暮れの森のなかにあるメリーゴーランドが突然あらわれて、ボクはそれを見ている。
そうしたらいろんな妄想を勝手にして、とても悲しくなってしまった。

井川啓央
井川啓央
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