先生、どこの★から来たの?

「ゲーテ先生の音楽会 〜先生、どこの★から来たの?」にご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。12月20日から22日の3日間全5公演、とても濃密な時間でした。

前作までのTHE GOETHEの世界デビューにまつわるお話とは違い、今作は洗濯機のない世界という設定で、お芝居が中心となりました。
舞台はヨシヤ少年の登場、ママとの会話のシーンで始まります。ヨシヤと言えば、あのヨシヤですね!5年前のクリスマス、宇田川町のステージで初めてお披露目された「ゲーテ先生の音楽会」に登場した、最初の患者さんです。確かに、話し方があのヨシヤにそっくりです。

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毎日、家族の服を手洗いする忙しいママと、話を聞いてほしい6歳のヨシヤ。ヨシヤはミヤマカラスアゲハを追いかけて服を泥だらけにして、ますますママをイライラさせてしまいます。
元アイドルのママという役で、セリフも多いなっちゃん。高校生なのに6歳の子持ちを演じるのは、よく考えたら違和感しかありませんが、ゲーテの世界では不思議と成立してしまうのです。

ヨシヤの友達を演じるのは、前作でもTHE GOETHEのバンドメンバーとして活躍したアベちゃんとレイナちゃん。今回は6歳のショウタとレイナとして登場です。これまた衣装の効果もあって、みんな6歳に見えるから本当に不思議です。

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今回、ゲーテ先生はなかなか登場しません。代わりに、蘭鳥という謎の人物がやってきます。彼は、一般家庭に洗濯機を普及させようと売り込みに余念がありません。
洗濯機があれば、ママは手洗いから解放され、自由な時間を手に入れることができます。そして、洗濯機を買ったことで負担が減ったなっちゃんママは、結婚・出産で辞めてしまったアイドルに戻るべく、歌や踊りのレッスンを始めるのです。

ヨシヤの家庭だけではなく、ショウタママもレイナママも洗濯機を買ったことで、これまでとは生活が一変。キャラがずいぶん変わってしまいました。ママたちは浮かれていますが、子どもたちはなんだか寂しそうです。
ヨシヤはもう、ミヤマカラスアゲハを捕まえるために森へ入ったりはしません。だって、服を汚してしまったらママが優しくしてくれないから。ママが好きなことをするために、自分の好きなことを我慢をするのです。

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そんなヨシヤたちは、ゲーテ先生と出会います。
蘭鳥とゲーテ先生。1人2役の増原さんは、見事にキャラの違いを演じ分けました。さすが!

子どもたちの好き理解者であるゲーテ先生は、とっても歌が上手。クリスマスソングを歌って踊って、楽しいひとときを一緒に過ごします。
そして、シジュウカラの餌やりや洗濯の手伝いをするため、子どもたちはゲーテ診療所に通うようになりました。

ゲーテ先生との楽しい日々。でも、3人には帰るべき家があります。
クリスマスの日、ヨシヤが帰宅すると、そこにはパパしかいません。アイドルとして復活したママはコンサートの真っ最中なのです。ヨシヤはパパを連れ出し、ママに会うためコンサート会場に急ぎます。
忙しいママを気遣い、パパが作ったキッシュを渡してすぐに立ち去るヨシヤ。その背中を心配そうに見つめるママ。パパはママに言います。「ヨシヤは、成長してるよ」と。
どこかのんびりした、おかでん演じるパパですが、ママの活躍と子どもの成長を温かく見守る、とても大切な役だったように思います。きっとパパなりに、家族をつなぐために一生懸命なのでしょう。

一方、コンサートを終えたママは浮かない顔。かつてステージに立っていた若い頃の自分とは違う。それを痛感しているのです。

「人生に後戻りってできないんでしょうか。」
蘭鳥に問うママ。もちろん、答えはわかっているのでしょう。今、何を大切にすべきかに気づき、普段のママの姿に戻ります。

ミヤマカラスアゲハを追って森へ向かうヨシヤたち。ヨシヤはもう、服を汚すことなんか気にしません。だって、もう自分で洗えるのだから。
そこにママがやってきて言います。
「ごめんね。ママはただのママでいいの」。
でも、ヨシヤはわかっています。ママのことだから、ずっと「ただのママ」でいられないことくらい。

そんな様子を見たゲーテ先生は、みんなが新たな一歩を踏み出したことを確信したのでしょう。
「大丈夫ですよ。ママもヨシヤ君も、自分の好きなように生きていけばいんです。レイナちゃんもショウタ君も同じです。そうしていつまでも仲良くいてください。この地球もそう捨てたもんじゃありませんよ。」

そして続けます。

ドイツの文豪ゲーテは、こう言っています。
『心やさしき人々よ愛する人とならいつまでも、時をともにしたまえ
傷つけてしまうなどと恐れてはいけぬ
嫌な思いをさせたくないと
逃げて断ち切ってはいけぬ
心やさしき人々よ
愛する人とならいつまでも、時をともにしたまえ
ヨハン ヴォルフガング フォン ゲーテ』

 

みなさんは、この作品で何を感じ取ったでしょうか?
台本を読む会で、井川さんはミヒャエルエンデの「モモ」に登場する時間泥棒のお話をしました。時間を生み出すためのテクノロジーが、逆に人々の時間や、もっと大切なものを奪うことになってしまっては残念ですね。

私たちはときに選択を間違うことだってあるでしょう。人間なのですから。でも、誤りに気づかせてくれる人が身近にいるのなら、道を正す勇気があるのなら、それでいいのではないでしょうか。

「ゲーテ先生の音楽会」は見た人の数だけ受け取ったメッセージがあると思います。ぜひ、感想をお聞かせください。

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