Etoire
Yoshino
2020

【収録曲】

7,ママは泣いた My mother is crying
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

この道はいつも 手をつないだね
すねたりおどけたり はしゃいだけれど
春になり 夏になり コートを着る頃
なぜだかあなたを そっと遠ざけた
夢中になるのが 怖くなったのよ
無償の優しさも わたしには辛くて

この道を曲がって 小さな口づけ
あれから連絡も 取らずにそのまま
プラタナス並木は 涙色の風
十年と二ヶ月が過ぎたわ キスから
ごめんねも 言えずに
幸せになれたの
あなたは 幸せに暮らしていますか?

今はわかる あの時の恋が
幼いわたしを 成長させたの
この道を歩く 小さな手をつなぎ
恥ずかしいから 空を見てた
すぐにわかった あなたの匂いが
風に乗って 届いたの わたしに
慌てて 探したけど いるはずもなくて
ママは うずくまり 泣いた

あなたは この世にいない 気がした

【ヨシノからの言葉】

かつて世田谷の保育園に勤めておられて、
のちに絵本『いやいやえん』や『ぐりとぐら』を書かれた
作家の中川李枝子さんのお話だったと思いますが。

保育園では、お弁当の時間になると、子どもたちはお母さんの自慢話で盛り上がるんですって。
まずはお母さんの作ってくれたお弁当を見せて、すごいでしょ?ってところから始まる。
子供たち「すごーい」ほかの子供が「うちのママは英語ができるんだよ」と言うと、
子供たち「すごーい」っていう。
また別の子が、「うちのママはここにほくろがあるんだよ」と言うと、
やっぱりみんな子供たち「すごーい」。

またまた別の子が「うちのママはゴキブリをスリッパでたたいたんだよ」って言うと、
子供たち「すごーい」。

子供にとってお母さんは、何だって自慢なんだと。
それだけで、わたしなんかおいおいと泣けてきます。
子供ってなんて健気なんだろうって思いません?

でもね。
わたしは、そのお母さんのことも気になっちゃう。
だって、お母さんていったって、ちょっと前までは小さな女の子なのよ。
虫が苦手だったり、ピーマンが嫌いだったり。
フリフリのスカートがお気に入りで、木べらをマイクにして歌ってみたり。
マジックペンでマニキュアごっこして、怒られないかとドキドキしたり。

それが思春期になって、初めて恋をして、そして男を知って、
よくわからないまま初めての結婚をする。
やがて初めての妊娠をし、初めての出産をし。
初めてのおっぱいをあげて。
生まれた子供はママを絶対的なものだと思ってるけど、
ママにとっては初めてだらけで、不安だと思う。
わたしには、よくわからないことだけどね。

動物がもともと持ってる母性っていうもので、もちろん乗り切ってしまうものなんでしょうけど、
ふとしたときに、ママも少女に戻ると思うの。
風がふと吹いた時に、ふと少女に戻ってしまう。
わたしはママなんだ。
だから少女に戻ってはダメなんだと思うかもしれない。
だけどなぜかふと懐かしい風が吹いて少女に戻ってしまった。
子供の前で。
そういうことってあると思う。
あまり見かけないのは、見せまいってしてる母親の意地からだと思うのね。
そんな歌です。

それでは聞いてください。ママは泣いた。

8,幕開け Dawning of an era
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

世の中は、腐ってるさ
あたしもね、ほんとそう思う
だからそんで 神様怒って
悪人を 淘汰したのね

心配はぜんぶ御無用
あなたはさ なんとかなる
笑ってよ あなたの時代よ
過去なんて どっちゅことない

神様大掃除 下界大掃除
冷たい闇がりに スポットが差す
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕が開けた
天も地も 穢れの極み
あたしもね 染まっていたわ
だからそんで 神様怒って
天誅が 下ってしまった

さよならは いつも突然
予測不能 不意打ちなの
生きている それは苦しみね
過去なんて なんくるーない

愛別離苦(あいべつりく)
怨憎会苦(おんぞうえく)
求不得苦(ぐふとくく)
五蘊盛苦(ごうんじょうく)

神様大掃除 下界大掃除
新しいステージ 緞帳が上がる
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕が開けた
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕開けの今

【ヨシノからの言葉】

2020年ももうじき終わりますが、まぁまあ、こんなシュンとなる年になってしまいました。
どうしてこういう事態になってしまったんですかね。
細かいことはいろいろですが、わたしは、要するに、神様の大掃除が入ったんじゃないかと思います。
どこそこの特定の神っていうんじゃないですけど、
どっか現世とは違うどこか見えない世界っていうのはありますよ。
そこの力が働いたってことです。

要するに、ここ何十年良かれと思ってやってきた、いろんなやり方が傲慢だったんじゃないかしらと。
だからこの機会に悔い改めないとだめなんじゃないですかと。
だけど人間て、一旦成功したヒトは、改心なんかしませんからね。
とくに商売で成功したヒトは止めらんないですよ。
執着しちゃって。
若いヒトは自分のやり方を信じて、突き進めばいいのよね。

これから景気が落ちるだけ落ちていくでしょう。
そんなとき損得勘定でやってたら、ますますロクなことにならないはずです。
だってさ、こうやれば儲かる、なんてセオリーあります?
新しいアイデアはいっぱいあるでしょうけど、社会はまだ古いですからね。
実際のアイデアを1センチ動かすのに、見えない経費がすごくかかっちゃう。
だから、なかなかそう簡単にはいかないと思います。
もしやるなら損するけど、やるんだとしないとね。

アイデアはある、だけど損はいや、だからやらないと、何もしなければ世の中は止まってしまいますね。
「損得なんか関係ない、もうこれをやらずにはいられないんだ」ってヒトがいて、
そのヒトを手伝うヒトがまたいて、それでようやく新しい時代に1センチ進むわけです。
まぁ大掃除は、今回のことくらいで収まるかわかりませんよ。
まだまだ、ドラスティックになにかあるんじゃないかなって予感もします。
いつ改心するのか。
わたしは、それは時期の問題だけだと思います。

それでは、聞いてください。幕開け。

9,愛のつぼ焼き Turban shells
作詞 エトワール★ヨシノ 作曲 マルグリット・モノー

いつも こんなことを考えているのよ
あなたがいるその
真っ青なお空にむかって
わたしは「だーれだ」って
腹の底から叫ぶの
するとあなたは その優しい笑顔で
「誰だろ もしかしてヨっちゃん?」
ってはにかんだりする
あなたが大好きだった
江の島の堤防の屋台の
そのつぼ焼きを私に差し出して
「ヨっちゃん指先が熱いよ あっち」
って耳たぶをつかむわね
そんな あなたに会いたい

あなたの熱い手で
あたしに食べさせて
ララふたりだけの
愛のつぼ焼き
魂が叫ぶのよ
熱いつゆがくちびる
もいちど二人は
肩寄せターバンシエール

バンドネオンに 灯がともる
聞こえるムジカ
フラフラフラリン
テケテケピョンピョン
踊りましょうよ
踊りましょうよ
あなたとふたり ムジカに合わせ
体引きよせ 浜辺にひとり
ふたりはターバントワイライト

あなたの熱い手で
あたしを引き寄せて
ララふたりだけの 愛のつぼ焼き
魂が叫ぶのよ
熱く濡れるくちづけ
もいちど二人は
肩寄せターバンシエール

【ヨシノからの言葉】

〜シャンソン喫茶エトワールでのオープニング〜

ようこそ、みなさま、喫茶エトワールへ。
わたくしはここの女店主、エトワール★ヨシノでございます。
こんなに少数の方にお越しいただいて、感謝感激でございます。
ありがとう。
今日は、たっぷりと6時間(笑)、わたくしの歌を、みなさまにお聞きいただきたいと思います。

あっ、ここ笑うとこで、さらに拍手のポイントです。

私はこちらで、40年あまりシャンソンを歌っております。
シャンソンとは『歌』という意味でございます。
イタリア語では、カンツォーネ(Canzone)、スペイン語ではカンシオン(Cancion)となりますね。
このシャンソン。
一つの特徴といたしまして、メロディよりも歌詞が重要なんだということです。
シャンソンの歌詞は、日常的なことばを使いつつ、歌がストーリーになっていることが特徴なのよね。
詩人シャンソニエの書く言葉は、鋭いエスプリ風刺を含んでいて、気のきいたストーリーになっていなければなりません。
このシャンソニエに求められるのは、歌がうまい下手じゃなくて、
ましてや顔の良し悪しじゃなくて(笑)。
そりゃ歌がうまい美人に越したことはありませんけど、
歌をどのように解釈し、自分の言葉で聞き手に伝えるか、その一点が大事なんでございますの。
わたしはシャンソニエとして、みなさんに「生きることの楽しさ、素晴らしさ」をお伝えしたい。
その思いひとつで40年この場所でやってきたんでございます。

それでは、ひとまず、お近づきの印としまして、一曲お届けしましょう。
愛のつぼ焼き。

10,亡き空に、オロール Talking with my father
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

月あかり プラチナ町
とおくに濤聲(とうせい)
聞こえてる 父は遥か
眠るよ どこかで

話したい 独り口
窓ガラス 雪曇り
忘れない 父は遥か
眠るよ しずかに

朝も夜も星も
ループは幾重にも
紙縒り(こより)を紡いでゆく
アパートの階段 乾いた足音
書きかけの手紙 破き
見ていてほしい
亡き空に オロール

エメラルド コバルト町
にぎやかなオロール
ありがとう 父は遥か
眠るよ どこかで
話したい これからを
マグカップ ミルクティ
懐かしい 父は遥か
眠るよ しずかに

朝も夜も星も
ループは幾重にも
使命はつながってく
針落とすレコード 鳴いてるオルガン
笑顔の写真ラララ
見ていてほしい
亡き空に オロール

天に瞬く オロールの下で
父よ話したい
父よ会いたい
森羅万象 享けた魂
挫けずに 道を生きる

天に瞬く オロールの下で
父よ話したい
父よ会いたい
森羅万象 享けた魂
挫けずに 道を生きる

【ヨシノからの言葉】

おとうちゃんとママは、横浜の元町あたりで小さな喫茶店をやっていて。
アタシはそこで育ったの。
港で働くヒトを相手にした喫茶店でね。
珈琲をサイフォンで淹れて、一杯200円て、そんな店だったのよ。
お酒は出さないの。
それはおとうちゃんが下戸って言うこともあったけど、
ホント言えば、ママが酔ったお客にモテるのが嫌だったのね。
おとうちゃんは、あれで案外ヤキモチ焼きだったから。

あのおとうちゃんに、なんでこんな美人が嫁に!?って横浜の七不思議の一つだったからね。
ママは、映画女優にならないかって、プロデューサーにしょっちゅう口説かれる美人だったからね。
ママの肌は真っ白で、ほんと白菊みたいにきれいだった。
あたし?フフ、あたしはザンネン。
おとうちゃん似よ。
見りゃわかるでしょ(怒)

店はね、忙しかったのよ。
あさは6:30に港湾のヒトが入ってくる。
夜は酔った後のお客が、コーヒーを飲みに来たわ。
私もずっと手伝わされたわよ。
人雇う余裕なんかないもの。
勉強なんかする暇ないの。
小学生の時から紙ナプキンを折ったり、パンをスライスしたりね。
当時は出前というのもあったから、近くの会社にアイスコーヒーなんかを自転車で届けたりするのよ。
ラーメン屋のおかもちに、アイスコーヒー入れてね。
クリームソーダなんてアイスが溶けたら怒られるから必死よ(笑)。

家族はもうずっと仕事。
家族で、のんびりするなんてなかったわよ。
運動会のときも親は見に来れないから、校長先生の横でゴザひいてお弁当だった。
想い出と言ったらね。
歓楽街のボーリングに行くこと。
何年かに一度、台風が上陸するでしょ。
すると港湾は封鎖になるから、そうすると店開けてても誰も来ないの。
そんなときは、おとうちゃんが、「いくぞ」ってボソって言う。
ハマボールは夜中までやってたから、そこに店を早閉めしてタクシーで行くのよ。
ママは、「2ゲームで帰るわよ、今日はなんにも稼いでないんだから」、って何度も言ったわ。
タクシーの窓から見える、ネオンの光景は今でも忘れないわ。
嵐で誰も歩いてないネオン街は、私たち家族のものになったような気分だった。
でも決まってね、ボーリング場に行くと、知り合いのお客さんがいるのよ。
酔っぱらって美人のママに絡んできたりしてね。
それで、酔っぱらいのオヤジたちとボーリングすることになるのよ。
せっかく家族水入らずだったのに、結局、店にいるときとおんなじ。
おとうちゃんもママもお客さんの前では、よそ行きの顔になるから。
それが寂しかった。

最期、おとうちゃんは、あっけなく死んじゃった。
それが後悔と言えば後悔ね。
おとうちゃんとは、もっといろんなはなしをゆっくりしたかった。
いまでもそう思うわよ。

歌います。亡き空に、オロール。