マメヒコのお客歴15年の酒井俊直さんとの対談です。
マメヒコの井川がやらんとしてることを誰よりも、
的確に理解していると自他ともに認める酒井さんです。
LESS IS MOREについて酒井くんと話をしています。
LESS IS MOREはボクが書いた小説のタイトルで、そこから話題は多岐にわたっています。
Less is moreとは、「より少ないことは、より豊かなこと」。
20世紀のモダニズム建築を代表する、ドイツの建築家ファン・デル・ローエが提唱した言葉です。
この言葉は、示唆に富んでいます。
ボクら日本人にとっては、
物が足りない戦中戦後から、物があふれる高度経済成長期を経て、
現代、それでもなお、満足しえない、いやむしろ、
物が少なかった時代よりもかえって不安が強いのではないか。
それはなぜなんだろう、と。
考えるヒントとして、LESS IS MOREは捉えることができます。
ボクに置き換えてみれば。
たくさんのものに溢れているせいか、ボク自身ほとんど、ものを買いません。
周りも買っているヒトを見ません。
給料が高いとか、低いとかは、さほど関係ないと思います。
買う気の起こらないボクらに広告は説きます。
「あなたはそれで大丈夫ですか?」と。
せっせと広告は不安を植え付け、ものを買わせようとします。
そしてさらには、生き方にまで、不安を植え付けてくる。
「あなたが感じているその薄幸感は、選択を誤ってきた結果なのです」と。
そして、
「いまからでも正しい選択をすれば、あなたは幸せになれるのです」と。
今からでも遅くない。正しい知識を手に入れれば、あなたは幸せになれる。
そういう手口で不安を煽り、選択を迫ろうとする。
そして不安症のヒトほど、その手に乗ってしまいます。
ボクは疑問に思います。
人間とは、つねに最適な選択などできないものではなかろうか。
顔だって選べない、親だって選べない、家族だって選べない。
寿命だって、いや、なにもかも自分では選べない。
それが人間ではないですか、と。
だからこそ、生きることは苦痛であり、
だからこそ楽しいことを見つける必要があり、
一緒に楽しいと感じる仲間がいるのでしょうと。
そして、生きていくうえで起きることすべて、
それは我が運命と引き受けて、生きるのです。
テレビが、いまこそ正しい選択をしなくてはいけないとボクの横で騒いでいます。
じっと引きこもるという選択を取るヒトがいる。
外に出て働くという選択を取るヒトがいる。
どちらにせよ相応の結果が、一人ひとりの人生に待っているのです。
選択の結果は、自分で引き受けなくてはいけない。
選択が怖いから、選択しない。
そういうヒトもいるでしょうが、選択しないという選択をしているのであって、
時間は容赦なく進んでいく。
LESS IS MORE 「より少ないことは、より豊かなこと」。
自分の選択は、すべて引き受けて生きていく。
ボクはそういう解釈をしますが、みなさんはいかがでしょうか。