重い溜息について

食事をつくることは、大人数でも少人数でも同じで、
いつも自分が食べているご飯が基本です。

ボクが料理をするようになったきっかけは、ひょんなことからです。
大学生の頃、ボクは学習塾を経営していて、
その教え子のお母さんが、とんでもなく料理が上手だった。
ほんとに和食でもケーキでも何を作ってもおいしい、
すごい女性だなと思ったのです。

それで「教えてほしい」、とせがんだのが最初です。
あのときがボクが初めて料理をするきっかけです。

それから見様見真似で、料理を覚えて、
あとは好きこそものの上手なれ。
料理の本もいろいろと読み漁りました。
けど料理はレシピを覚えることじゃないなと。
有元葉子さんの本だけ残して、他はほとんど捨てました。

ニューヨークに住んでいたことがあって、そのときは、
毎日スーパーマーケットに入り浸り、
食べたことのない食材を片っ端から買って、料理したことも良い経験でした。

ニューヨークの食事は、ナッツとスパイスの使い方、
そして盛り付けが楽しくて美しい。
それに炭や薪を使ったり、グリラーが豊富なので、
シンプルに焼いただけが一番美味しいのだ。
それは向こうで覚えたことです。

ボクの作る料理は、毎日の家庭での食事の延長にありたいと思っているので、
・シンプルであること
・素材の味がすること
・美味しすぎず食べ飽きないこと。

が基本なのです。

ボクがマメヒコをやるようになって、
シンプルな食べ物を提供することと、
ビジネスを両立することの難しさに何度も直面しました。

そのとき、励まされたのは六花亭です。
マルセイバターサンドを作っている北海道のお菓子屋さんですけど、
とにかくなにを食べても美味しい。
ほんとの手作りではないのに、美味しいものが作れる、そしてビジネスになってる会社があることは励みになりました。
またお店の建築も素敵だし、音楽ホールを作って音楽会をやったり、
子供の詩集なんかも出していたり。

ボクやマメヒコは六花亭にとても影響されていると思います。

六花亭の本店にいくと、店の隅にひっそりと看板が出ているのです。
そこにこう書かれています。

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店はお客様のために毎日たくさんのお菓子を製造していますが、
お召しあがり頂くのは、あくまでもその中のひとつです。
お客様にとって、その大切なひとつのお菓子が
いい加減な製品では許されません。
私どもは、お菓子の販売にあたっては『満足保証制度』を取り入れています。

お口に合わない、いつもとちょっと違う、どんな理由でも結構です。
ご満足頂けなければ恐れ入りますが現品をお持ちください。
交換、返金、その場でご希望どおりに対応いたします。
お菓子の製造にあたっては岩波新書『食品を見わける』(磯部晶策著) にまとめられている良い食品の四条件の定義を基本としています。

1.安心して食べられること。食品添加物について考えるとともに、食品衛生の基本から安全を追求する。

2.ごまかしのないこと。偽和、不当表示にとどまらず、一切のごまかしを排する。

3.味の良いこと。化学調味料や、表示上で「天然調味料」と呼ばれるものなどによる安易な味付けに依存せず、原材料と技術の調和による美味を生み出す。

4.品質に応じた妥当な価格。どんなに良くても品質に比較して  不当に高い価格は失格と考える。

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これを読むとなるほどな、 たしかに六花亭のお菓子には嘘はないな。
あぁマメヒコはそれに比べて全然、いたらないなと。

北海道からの帰りの飛行機に乗りながら、
ああぁとため息のつくことが多かった。

他にも、いろいろとお手本になるものは多いです。
そういうものを見たり、食べたりするたびに、
あぁ、ああと悔しくて重い溜息をついて今日がある。

それでも、「マメヒコは素敵です」と言ってくれるお客さんもいるし、
若いヒトの中には、ボクらに影響された子もいるかもしれませんからね。

いい加減なことはできないなと思います。唯一無二のカフェになるのだと信じて、 今日もみんなの手で店を開けているのです。

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