ショッピングモールのほころびが目立ってきている。
まだ真新しい建物なのに、すでに終わりの気配が漂っているのは、
なんとも切ない。
なんでこうなっちゃうんだろうと、いつも考えるけど、
もともと、こういうものは日本には向いてなかったんだと思う。
区画がきちんとわけられていて、
そのなかに商品が整然と並んでいるものに、
日本人は、魅力を感じないんだと思う。
もっと雑多で、混沌としている、
闇市やアジアの市場みたいなものに活気は起こり、
付加価値は生まれるんだと思う。
線引した区画から、一ミリもはみ出さないでくださいね、
マメヒコさん、線の内側だけで、頑張ってくださいね。
みたいな、大家さんが偉いんです、区画販売型ビジネスは、
もう終わりなんだと思う。
だってこんなの、買うヒトのことはそっちのけで、
購買意欲なんてちっとも掻き立てられないから。
ボクが一棟まるごとを借りて、
その中を全部好きにやっていいとなったら、
まず区画を取っ払う。
リアルな空間を回遊することそのものが楽しい、
そういうショッピングを提案しないとダメだと思う。
ゲージの中で、あなたらしくね、と言われても、
羽のない鶏は逃げ出すことも知らない、だ。
定点でのぞくショッピングモールも、相変わらずやばい。
次々とテナントが抜け、かわいそうに、
空き部屋コンテストみたいになってる。
ただひとつ元気なのは、吹き抜けに植えられたシマトネリコ。
手を入れる余裕がないんだろうか、放任され、
かえって年々、たくましくなってる。
ショッピングモールも、
このシマトネリコとともに育ちますように。
そんなシンボルツリーなんだろうが、
今となってはなんとも皮肉だ。
きっとこのシマトネリコだけが、ここの生き証人になる。
不動産価値は五輪後、大幅に下落して、
中堅のショッピングモールは、いまの形ではやれなくなるだろう。
そうなったら、個人の変てこなテナントが入れるようになる。
そうしたら、区画が溶けだし、収集がつかなくなり、
そこでやっと、モールとして面白くなるのかもしれない。
意地になって、家賃も下げず(融資した人たちが下げさせないんだと思う)、
100均とか、全部ドラックストアになったところで、もう限界がある。
十数年の間に、オーナーはいく人か変わり、店子も変わり、
シマトネリコだけが、すべてを知るだろう。
うちも、ショッピングモールへ出店の誘いを受けることがあるけど、
ボードゲームみたいな商売をやってる人たちのところに参加して、
区画をはみ出さなくては人は魅力を感じませんよ、とか言っても、
こいつバカかと思われるだけだから、ほとんどお断りしてる。
ただ、そこで働くヒトや利用するヒトの気持ちを優先すると、
間違ったことは言ってないつもりだけど。
発言力もないのに本質をついたようなことを言うのが、
ボクの男としての浅はかで愚かなところだということまでは、
わかっている。