今回の、「食べよ、」。おかげさまで、のべ11回目を開催することができました。一年以上続いているこの会、毎回あるテーマに沿った食べ物について、ボクが独断と偏見で語る会なんですが。
聞き手は、角田陽一郎さん。角田さんがいなければこの会はこんなに続いてません。
ボクと角田さんは長いお付き合いなので、角田さんがどの分野は詳しく、その代りどの分野は過度に無知だとわかり合っています。角田さんの良いところは(ちょっと偉そうな言い方になってしまうけど)、丁寧に教えてあげると、いつもとても感銘し、「いやー、今日もいろいろ考えさせられちゃったなー。日本の闇は根深い。こういう問題にテレビ屋として切り込みたかったんだけどねー」と身悶えるところがボクは好きです。
そういう角田さんが見られるこの回が、毎回楽しみでなりません。
来てみるまでは、どんな会かわからない。けれどひとたび参加してみると、帰り際になんかもやもやが残る。なんだろう。この、もやもやがなんとも説明がつかない。
ボクは自らで主催する会は、そんな会にしたいといつも思っています。
一番キライなのは、予定調和なハリボテみたいな会で、「こんな会ですよ、ぜひいらっしゃーいと、かっこよく喧伝されてあり、実に行ってみたらそのとおりの会」、そんなときは、ほんとにがっかりです。
今回の「食べよ、」、テーマはイモといもと芋。
日本人にとって芋とは本来ヤマイモのこと、自然薯を掘ることなんじゃないのか?
それに対して里で作った人工的な芋、つまりタロイモが里芋なんであり、はて、じゃがいもなんてのは、昨日今日やってきた食べ物であって、土地のものじゃない。
最後はいつものとおりヒートアップして、
「じゃがいも、コラ!!なんでこんなに幅利かせてんじゃい、貴様」
ってはなしになって二時間の話を締めました。「なんかみんな食に対して関心強いし、食材に慎重な割に、いろいろと騙されちゃってるけど、それでいいの?」って話をすると、
「いやー、今日もいろいろ考えさせられちゃったなー。日本の闇は根深い。こういう問題にテレビ屋として切り込みたかったんだけどねー」と角田さんが身悶えるのです。
たとえば今回。
ポテトチップスのパッケージを並べてみました。見ると、どれも大きく国産じゃがいも使用って書いてある。カルビーを除けば。
これ間違いじゃありません、だけど消費者に誤解を与える。「わざわざ書いてあるってことは、国産じゃないポテトチップスもあるんだー」と。
そんなの無いからね。だって日本では生じゃがいもの輸入は原則禁止されてるんだから。生のじゃがいもを揚げて作るポテトチップスが、輸入じゃがいもを使うことなんて無いわけ。カルビーを除けば。
ちょっとややこしいのは、ポテトチップスでも、チップスターのような整形してるチップスは、原料が乾燥ポテトなので輸入品を使ってます。
ではファーストフードのポテトはどうなのかっていうと、あれはすべて加工品を輸入してる、全品輸入品なわけね。
もうこの時点で、たいてい、ややこしすぎてポカンなんだけど、一応は、「へぇ~知りませんでした」っていうんだよ。けどこれ、ボクが物知りなわけじゃなくて、パッケージ読めばちゃんと書いてあることなの。
「パッケージなんてまじまじと読みませんから」
ボクがこの会で主張したいのは、自らを肯定したい気持ちからですけど、巧みなからくりに鈍感でいると、結局、大きな体ばかりが残って、多種多様な中間層がいなくなってしまうんだけど、それでいいの?です。
そうなれば(もうすでにそうなっていると諦めてはいるけど)、とてもつまらない社会なんじゃないかと言うのがこの会の趣旨です。
ボクはマメヒコを好きにやらせてもらっています。誰かにおもねったりする必要もなく、スタッフもお客さんも「井川さんのわがまま」を半ば諦めて付き合ってくれてますから(付き合いきれねーよ、とみなさんお辞めになったりお店に寄り付かなくなりました)、自分が嫌なものはマメヒコでは出さない、好きなものはしつこく出す、を一貫しております。
先月から始まったマメヒコのツナサンド。いままで使っていたのはタイ産の缶詰です。業務用のツナ缶を問屋さんから取り寄せると、ほぼ100%タイ産、もしくはスペイン産です。それ以外の選択肢はほぼありません。
タイのツナ缶、材料のマグロは日本から輸入し、加工して日本に輸出しています。タイの安い人件費を生かし低価格で、全世界に缶詰を輸出しているんです。
でも日本でもツナ缶をほそぼそと作っているところは当然あるわけです。調べてみるとタイ産の数倍の価格です。飲食店のそれもツナサンドで、原材料を国産のものに変えて、売価に乗せられるところなんて多分ないと思います。
でもそうなると、日本のツナ缶屋さんはいずれなくなってしまうんですね。それはいけません。
マメヒコのツナサンド、タイ産から静岡産のものに代えることにしました。なんてことのない小さなことですよ。けど「北京でバタフライが羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」ということがあるんです。