先生、般若心経を唱える
「ゲーテ先生の音楽会〜先生、お経を唱える〜」では新曲が披露されましたが、キーワードになるのは般若心経と古典と宮沢賢治です。今回は、この3つについて振り返ってみましょう。
まずは般若心経について。
今回のお話の重要なシーンの1つが、ヨシホの前で歌うかどうかを先生が思い悩む場面です。THE GOETHEが許可なく人前で歌うことは契約違反になるため、ソラはヨシホを追い返そうとします。しかし、実家がお寺だというアベちゃんが「お経を唱えてあげればいいんじゃないですか」と提案するのです。歌詞とメロディのある「歌」ではなく、お経であれば契約違反にならない。そして、先生たちは般若心経を唱え始めるのです。そう、「歌」ではないけれど、これもTHE GOETHEにとっては曲の1つ。だから、歌詞カードにも「般若心経」が書かれているのです。
「今昔物語の唄」と「枕草子の唄」
みなさんも学校で習ったことがあると思いますが、今回は古典の「今昔物語」と「枕草子」をテーマにした新曲が披露されました。
マネージャーのアンコさんに乗せられて、まるで選挙活動のようにタスキをかけて拡声器を持たされる先生は、そのまま「今昔物語の唄」を熱唱。拡声器を通じて聞こえる「昔は良かった 昔は良かった」のフレーズが耳に残ります。今昔物語が書かれたほどの昔でなくても、「あの頃はよかった」と思う時代は誰しもあるでしょう。過去に縛られてばかりでは先に進めませんが、ノスタルジーに浸ることは悪いことではありませんね。
「枕草子の唄」は、「春はあけぼの」から始まるおなじみのフレーズが歌詞になっています。古典文学としてではなく音楽として描かれた情景は、みなさんにどう届いたでしょうか。
宮沢賢治の世界へ
お芝居の中で、「マリヴロンと少女」という宮沢賢治の小説が登場します。歌うたいのマリヴロンと、アフリカに旅立とうとする少女・ギルドの短い物語です。このお話をゲーテ先生とヨシホが朗読しますが、暴走するヨシホと先生の掛け合いが大きな笑いに包まれる注目シーンです。
もちろん、宮沢賢治の原作には笑いの要素はありません(笑)。原作は以下のサイトでも公開されていますので、ぜひ読んでみてください。
「マリヴロンと少女」宮沢賢治
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card1922.html
この世界観が新曲「マリヴロンと少女の唄」になったのだと思うと、さらに作品への理解が深まることでしょう。物販では「マリヴロンと少女」の絵本も販売されました。
「マリヴロンと少女の唄」に続いて演奏されたのが「ヨダカの星の唄」です。こちらも「よだかの星」という宮沢賢治作品をモチーフとしています。「よだか」は「夜鷹」のことで、小説に書かれているよだかの悲哀や強さ、そして美しさが歌詞にも表れています。
「よだかの星」はこちらで公開されていますので、ぜひお読みください。
「よだかの星」宮沢賢治
https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card473.html
今作の副題は「お経を唱える」でしたが、般若心経だけではなく、さまざまな作品をテーマにお芝居や新曲が盛り込まれていました。それぞれのオリジナル作品が持つ背景とゲーテの世界観とが重なり、お芝居や音楽を通じて大切なメッセージが届けられます。
「ゲーテ先生の音楽会」をご覧になって、般若心経や古典文学、そして宮沢賢治作品に興味を持った方は、ぜひ副読本として関連書籍を探してみてください。