さて、ヴィルヘルム・レプケについて説明していきます。
彼は戦後のドイツ出身の経済学者です。
その前に「ドイツの新自由主義者たち」について説明します。
■「ドイツの新自由主義者たち」
第二次世界大戦後のドイツは敗戦国でしたから壊滅状態だったわけね。
さらに東西ドイツに分かれてしまう。
ナチスの後始末も含めて混乱しまくってるわけですが、西側ドイツを経済再生させたのが、ヴィルヘルム・レプケを始めとするドイツの新自由主義者たちです。
ではその、「ドイツの新自由主義者たち」ってなんぞやと。
とてもロックなヒトたちです。
いまの経済体制を批判してね、こんなんじゃダメなんだよ、と。
命の危険にさらされても、ダメなもんはダメだとレプケは言った。
ヒトラーに、お前ダメだよと直接言ったんだから、ロックだよね。
だからレプケは、スイスに亡命してるんです。
それで、あるべき理想の経済体制を設計したんですね。
そして、その設計図通りに政策をやり、
西ドイツの奇跡と言われるほどの経済復興を実現したわけです。
「ドイツの新自由主義者たち」はレプケが大元なんだけど、
フライブルク学派、ミュラーアルマックと続くわけ。
■レプケの大まかな考え
さてそのレプケ。
彼は一体、なにが言いたかったか。
それは、
「現代文明世界はきわめて病気でそれも重症だぞ。
だから、なんとしてもその病気を治すための治療の道を探るんだ」
ずばり、そう言ったわけ。
その病気というのはね、現代文明病です。
具体的には、
「プロレタリア化」「大衆化」「アトム化」「全体主義」
が挙げられるんだけど、ひとつずつそれは後で説明する。
これを経済学で治療しようって考えた。
レプケが考えている経済学は
学問としての経済学(いわゆるエコノミックス)ではないのね。
ちゃんと実践的な経済学で、それによって人々が救済される。
そういう経済学を考えたんだよ。
それが「ヒューマニズム経済」なんだよ。
■アダム・スミスからの出発
レプケが「ヒューマニズム経済」に行き着いたその原点は
アダム・スミスにあると言われてるわけ。
アダム・スミスと言えば「神の見えざる手」と知られてるね。
「経済はすべて市場の原理に任せておけば、
見えない神の手でいいところに収まるからね」ってやつだよ。
これは「国富論」というやつだけど、誤解されてる。
どう誤解されてるかと言うと、
「ほっといても神の見えざる手が入るから、
市場経済に誰も干渉すべきじゃない」
って誤解されてるのね。
でもそれは間違いで、アダム・スミスは自由経済に対しては認めてるけど、
それは『道徳感情論』、つまり人間的なモラルが守られた状態であることが
前提なんだと言ってるんだよ。
このアダム・スミスは『国富論』と『道徳感情論』が
セットになっているところがすごいとレプケは考えたわけ。
ところが、アダム・スミスの経済学は
「好き勝手やっていい」という風に誤解され、
「モラル」についての視点が抜け落ちてしまったことが問題なんだと
レプケは考えた。