乾貨は戻すもの

乾貨というのは中華料理の食材。中国の高級珍味としての乾物は、なまこの干したもの、ふかひれ、魚の浮き袋、燕の巣、熊の手、鹿のアキレス腱、ヒキガエルの卵管なんかがあって、こういう乾いたもので、お金の代わりになるようなものを乾貨というんだけどね。

中国は乾燥地帯で面積が広いからシルクロードなんかに食材をのせて流通させるのに干したほうが便利ということで、乾物を食べる習慣が出来たんだろうね。乾物を戻すことが中国の一つの食文化だよね。

乾燥させると旨み、風味も出て、生とは違う食感が生まれる。

この戻すという作業が大変なんだよね。

ものが違うから、ひとつひとつの個体に寄り添って戻していく。ひとつずつ丁寧に心を込めて戻して上手に戻ったものは非常に高価なものになるんだよね。日本の乾物だと干ししいたけ、切り干し大根、煮干し、昆布などは大体水で戻すけど、中国の乾物は油で戻す、塩の力で戻す、一回揚げて、更に蒸すなど、工程を何回か繰り返して、一週間くらいかけて戻していくものがあるんだよ。

カフェをやってると、いろんなヒトと付き合うことがあるよね。若い子なんかは特に心許無いのでボクになついてきたりするんだけど、この子たちについても、乾貨のようにそれぞれの旨みを出していくにはそれ相応の戻す作業をしなくちゃいけない。どうやってこのヒトたちを戻していくか。探求心を持って、水で戻したり、お湯で戻したり、油で戻したり。戻すためにあの手この手を使って切磋琢磨した中国人の根気強さのように、ヒトも馴染んでふやけてくるには3年、5年と月日はかかるなと思うんだよね。例えが適切かは分からないけど、ヒトもふっくら戻って味が染みた時にはひとしおだね(笑)あ~戻してよかったなと。どんなものでも、執着をもってそれぞれに寄り添って戻し方を変えたりしながら、ふっくらと戻していくことは、料理もヒトも同じ様なところがあるね。

だから、皆さんの周りにいる乾貨をゆっくりじっくりと戻して、ふっくら味が染みるように日々精進なさって下さい。

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