先週末に神戸で「面白可笑ひこ」をやったんですね。
今回は星野富弘さんの詩の朗読。星野さんは障がいをもっているのに素晴らしい絵を描くということで世間からはフューチャーされてるけど、ボクは、頭の良さ、洞察力の凄さが星野さんの魅力だと感じてる。
星野さんのエッセイ集の中に「渡良瀬川」というのがあってね。
小さい頃、川で遊んでいたら濁流にのまれ溺れかけ、もがきながら、このままじゃ死んでしまうかもしれないと思った。その時に、穏やかで浅瀬の石に水がぶつかって白く波打っている慣れ親しんだ渡良瀬川を思い返し、今はピンチだと思っているけど、このまま流れに身を任せて泳いで行けば浅瀬につくであろう。そう思った途端に、その川はいつも遊んで慣れ親しんでいた川になって、なんのことはなく浅瀬について命を落とさずに済んだ。それは今もそうで、自分は24歳で器械体操の先生として模範演技を見せている時に誤って首から落ちて障がい者になった。当初はそのことが辛く、絶望の淵からリハビリして、なんとか少しでも良くなろうと思っていた時はきつかった。
つまり、元いた岸辺に戻ろうと思うとつらいけど、流れに身を任せて、一つのものを深く見つめる眼差しと時間を手に入れたと思うことにして、今は絵や詩を書いている。そういうことを小さい時に遊び場だった渡良瀬川から教えてもらっていたんだという、そんなエッセイ。
星野さんのエッセイ、詩はわかりやすい。それは星野さんがそもそも持っていた、ヒト好き、自然好き、明るさ、サービス精神がある気がするんだよね。
ケガに倒れていても、少しでもヒトを喜ばせたい、驚かせたい、あっと思わせたいというようなスケベ心というのかな、それがいいなと思うんだよ。ヒトと会わなくなって植物の絵ばかり描いているけど、どこか人間が好きで人間の持っている欲、性を捨てずにいる。不幸でいても、上手いこと言うね!という落語のオチのようなサービス精神があって、身につまされるという感じがないのが、ボクがこのヒトの書くものが好きな理由のひとつです。