【収録曲】

1,グズのブルース The Blues for slowpoke
作詞 エトワール★ヨシノ 作曲 石川潤一

どんなとこにもいるもんだ
一生懸命 頑張ってる
それでも なんの
役にも立てず イラつかせる
だからグズは考える
「こういうときこそ笑うんだな」
失敗続く
なに笑ってんだ ふざけてるなよバカタレ
グズよ負けるな パッパヤー ブルース

いつも唇噛みしめて
涙がポタリ 膝に落ちる
それでも 今日も
おんなじミスを
リピートする
だからグズは考える
「いなくなったほうがいんだ」と
荷物まとめる
なにをしてんの とっととやりなさい

グズよ負けるな パッパヤー ブルース
グズよ負けるな それしき
グズよ負けるな それしき
グズよ頑張れ
ブルース
ブルース
ブルース

【ヨシノのからの言葉】


あのね、わたしにとって『グズ』ってのは、褒め言葉ですからね。
グズはさ、怒られて、慌てて、失敗して、また怒られてって。
自分のことはいつでも後回しでしょ。
ねぇ。

髪の毛がいつも跳ねてたりね。
自分が損しようがなにしようが、 いつもテヘヘって笑ってるの。
グズには明るさと愛嬌があるわね。
北海道に、従業員5名の小さな自動車修理工場があって、 そこに知り合いがいるの。
このコロナの騒ぎのときにもね、ちっとも休んでないんだって。
偉いわよ。
まぁ、お金、支払いなんかもあるんだろうし、 休んでらんないってとこが本音かもしれないけどさ。
そこの社長さんとはなしをしてて驚いたことがあるの。
その工場はね、出社時間も退社時間も決まってないんだって。
ずっとよ、ずーーっと。
だけど、朝の7時には全員、びしっと揃ってるんだって。
かっこいいわよね。

どうしてそうなったかって聞いたのよ、そしたらね。
北海道の冬、夜中にしんしんと雪が降ってる。
一晩で背丈ほど降る日だってある。
そんで朝の9時から仕事を始めようってなったらさ、 雪かきをして、
道を作ったりしてからじゃないと始めらんないわけね。
そうなると、自然と、めいめい、朝7時に集まるようになったっていうの。
もちろんそれは冬のはなし。
だけどさ、その、雪の降らない季節でもよ、 結局7時に集まって仕事始めてるっていうの。
なんとなく「そういうもんでしょっ」て働いてるんだって。
わたしね、このはなし聞いて、それだけで泣いたわね。
何かって言うと、ブラックとかさ、ルールとか管理とかで、 やいのやいの言ってる昨今。
しびれるじゃない、いいじゃない、あっぱれ日本人て感じ、しませんか?
そのなかに、修理工の試験に何度も落ちてる、 いわゆる『グズ』もいるそうなのよ。
だけどね、その『グズ』さん。

「おい、お客さまのタイヤを出してくれよ」って、 社長さんがひとたび言うとね。
「はい」って言って、山積みになったタイヤ置き場から、
即座にお客のそれを見つけて持って来るって。
しびれるね。
しびれますよ。

なんとなくあすこにあったな、って探し出して持ってくるんだから。
そういう従業員がいてくれるからね、社長さんも色々と大変だけど、 工場を続けようって思うんですよね。
それ、わかります。
その気持、わたし、ホッントわかります。
あの、言っときますけど、『グズ』と『クズ』は大きく違いますからね。
そんなアタリマエのこと、言わせないでよぉう。

『クズ』っていうのは小賢しいやつよ。
いるでしょ?自分の損得ばっかり考えて、 ちょっと自分の取り分が少ないとひがんでみたりするあれ。
多くくれそうなところないかと、キョロキョロしてるあれ。
『グズ』さんは美しんですよ。
それはきっと、生きてるだけで悲しい思いを、 いっぱいしてきてたからだと思うのね、うん。
はい。

あたしも『グズ』なんで。
わかります。
悲しい思いがヒトを美しくするんですよ。
フフ。
それでは聞いてください。
グズのブルース。

2,ニュースとゲーム News and Games
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

雨があがり 下りの坂道
君はほら うつむき歩く
裏切られた 真っ赤な世界に
君は空 見上げて 血を吐く
悔しさをぶつけようと
叫び声を 上げてみたけど
ちぎれた翼は 痛過ぎて
声にならない

ニュースが報じてる
「世界はひとつ」と
真っ赤な嘘さ あんな話しは
捏造だらけのフェイク
ニュースが報じてる
「人間は賢い」
でたらめだらけさ そんなデマは
偽善だらけのサイン
砂の小道 海に続く道
君は嗚呼 疲れて眠る
もたれ合う ふたりの世界
波の音 寝息と重なる
弱い心を隠そうとして
ささいな嘘に 噛み付くけれど
立ちすくむ ひとりは
ずっとずっと 寂しいはずさ

ニュースが報じてる
「命は尊い」
真っ赤な嘘さ あんな話しは
捏造だらけのフェイク
ニュースが報じてる
「弱者は美しい」
でたらめだらけさ そんなデマは
偽善だらけのサイン
ニュースは報じない
「ふたりの出会い」を
信じるボク 疑うキミ
ボクとキミとのゲーム
ニュースは報じない
「ふたりのかけひき」
DROPするボク BETするキミ
ボクとキミとのゲーム

ニュースが報じてる
「人間は賢い」
でたらめだらけさ そんなデマは
偽善だらけのサイン

【ヨシノのからの言葉】

ちょっと極端な話ししますよ。

もし明日、大地震が起きたとして。

たとえばよ、たとえばのはなしね。

たまたま居合わせたビルが崩れて、あなたはコンクリートのがれきの下敷きになったりするじゃない?
ねっ。

そういうことだってある。

ないとは言えなくもない。

東京にいたら、いつ大震災起きたっておかしくないから。

そんで、そんでね。

 

救助を待っているとき、なぜかそのがれきの下のポッカリとあいた空間に、もうひとり息をしてるヒトがいる。

砂埃の中で目が合って、「奇跡ですね」「ほんと」なんて話しながら、救助を待っている。

幾日か経って、互いに励ましあって、やがて二人は助け出される。

それが馴れ初めで二人は生涯を共にする。

そういう運命があなたに待ち受けてないとは、ないとは言えなくもありません?


「地震が起きました。死者は何人。未曾有の悲劇が起きました」っていうニュースの背後に、
こういう物語がないとは言えなくもないでしょう?


ニュース、ニュース、ニュース。


いまのニュース番組、ありゃなんですかね。

あんなもの、頼まれたってわたし見ませんよ。

いつも、なーんともいやな後味っつーの?お醤油と牛乳を混ぜたものを、
アイスカフェオレと間違って飲んでしまったようなね。

どうせニュースをやるならよ、ハッピーニュース専門チャンネルってのをやりなさいよ。

そしたら見るわよ。


「今日、どこそこで、こんな勇気ある行動したヒトがいたんです。

テレビの前の皆さん、みんなでその勇気に拍手しましょう。

イェーイ、拍手」


わたし、拍手します。


「さて続いて先読みニュース。

明日、あなたになんともハッピーなことが起こります。

それを、ここでこっそり教えちゃう。

けど、教えたらつまんないから、今夜はぐっすり眠って、明日の朝、楽しみに起きてくださいね。

あっ、ニュースでもなんでもなかった。

とりあえず、イェーイ、拍手」


わたし、大きな拍手します。


あなたにとってのハッピーニュース、そちらを大事にしてくださいね。

それでは聞いてください。

ニュースとゲーム。

 

3,ブルーのコスモス Blue Cosmos
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

廊下の影 あなたの声 立ち止まった
笑い声 愉しそうね 泣きたくなる
偶然なの カフェテラス 慌てたのよ
怒ってみせた シャイなわたしを
見抜かないで
風にブルーのコスモス
青空向かって 胸の奥が苦しい
いつか素直になりたい
ほんとの気持ちを 知ってほしくて
淡いなみだの恋心
わたし ブルーのコスモス

名前呼ばれ 振り返ると あなたがいた
帰り道の 銀杏並木 ダッフルコート
学校をやめる それだけさ 言葉残し
私置いて歩いてく かすむ背中
風にブルーのコスモス
青空向かって 胸の奥が苦しい
いつか素直になりたい
好きだった気持ちは 届けられず
花が散ってゆく季節
わたし ブルーのコスモス

いつか大人になりたい
好きだった気持ちは 届けられず
花が散ってゆく季節
わたし ブルーのコスモス
いつか大人になりたい
好きだった気持ちは 届けられず
花が散ってゆく季節
わたし ブルーのコスモス

【ヨシノのからの言葉】

When Pigs Fly.
これ空飛ぶ豚って言葉。
英語で不可能を表すことわざなんです。

「お前が弁護士になんかなれるもんか、
まるで豚が空飛ぶようなもんさ」

っていう使い方ね。
でもですよ。
2020年。テクノロジーって進んでますでしょう!?
すごいですよねぇ。
ほんと近いうち、豚なんか空飛ぶかもしれません。
大きくなったら豚舎から自動的にドローンが豚を運ぶとかね。
バイオテクノロジーもすごいでしょ!?
なんですかね。人面犬とか、人面魚とかもできるわね。
犬の顔したヒトなのか、それともヒトの顔した犬なのか。
あっそれは、犬面人か、ハハ。

Blue Roseっていうのもおんなじ意味らしいわね。
不可能、無理、って英語のことわざ。
バラには青い遺伝子ってないんだってね。
だから青いバラって絶対に無理なんだって。
ところがどっこい、いま青いバラってあるんですよ。
なんでもパンジーの青い遺伝子をバラに組み込んだそうよ。
すごいよね、すごいわね。
Blue Roseの花言葉は、不可能だったらしいけど、
いまは「願えば叶う」に変わったんだって。
花言葉ってのもいい加減なものだけど。

でもね。わたし、不可能、てなんか大切なものを含んでいる気がします。

(あのヒトのことが好きで好きで仕方ない。
だけど、だけどさ。
この恋は実らないの。絶対無理なのよ)

そう思ったら、シュンってなって、
枕に突っ伏して泣きたくなるときあるでしょ。
あるよね?ありません?わたし?、、、ありますよぉ。

そうやって、なにか大切なヒトなのに諦めなくちゃいけない。
そういう辛い経験をすると、傷が心に深く残りますね。
ずっとずっと、シクシクと痛みが残ります。
できれば傷つきたくない?たしかに。
それを避ける方法がありますよ。
かんたんなことです、大切なヒトを作らないことです。
誰も好きにならないことです。

でもね、傷があるからヒトに優しくできたりするのよ。
不可能なことってあるんだ。
そうしてできた心の傷は、傷のないヒトより美しいのはなぜでしょうか。

青いコスモスって、いまのところないでしょ?
えっ?いま研究開発してるとこあるの?
余計なことしないでもらいたいです。
それでは聞いてください。ブルーのコスモス。

【収録曲】

4,始まりの別離(わかれ)Farewell is beginning
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

あぁ離れがたき 思いこらえて
遠きかすみし 山を見上げて
別れ告げしき さぁ行かん

あぁ葉桜咲き 川面まばゆし
声も笑顔も そばにいるよで
散り降る春風切なく

背を押す風に 身をまかせ
歩んだあの日は 遠き雲
明日は違う風吹く 始まりの別離(わかれ)

さぁ手を放さむ 涙拭ひて
笑ひ歌ひし 日々は忘れむ
おのがししの道を行かし

背を押す風に 身をまかせ
歩んだあの日は 遠き雲
明日は違う風吹く 始まりの別離(わかれ)

【ヨシノからの言葉】

仏教の言葉に「生者必滅 会者定離」(しょうじゃひつめつ えしゃじょうり)というのがあるのね。
命あるものは必ず死ぬし、出会った者は必ず別れるっていう。
あーた、そりゃそうよね。
誰も死なないで、ずっと生きてたらそれはそれで怖いですよ。
わたしも、この言葉は普遍の真理だなってわかってます。
みなさんもうなずいてるから、わかってますとも、ですね。
だけどさ。
だけどね。
わたしが小さかったとき、初めてこの「生者必滅 会者定離」ってことを知ったとき、
到底受け入れられませんでしたよ。
だって、それはあまりに残酷じゃないですか。
せっかく生まれてきて、楽しく生きてんのに、どうせヒトは死ぬんだ、
どうせ愛したってやがて別れるんだ。
父も母もわたしを置いて逝ってしまうのかしらと思ったら、
寂しくて父と母の手を握りながら死なないでって、お願いしながら寝たこともありますよ。

学校でとても仲の良いお友達ができて、それなのに結局はいずれ別れてしまう。
そんなことあるもんか。
お釈迦様だかなんだか知らないけど、わたしは一生、大切なお友達と付き合ってみせるっっっ。
そんな風に思ったりしてね。
わたしたち、ずっとずっと友達よね。
しつこく何度も確かめたりしてさ。
わたしは子供時代、転校を繰り返した子供なんだけど、転校先に行ってもね、
仲の良い友達とは文通を続けたりしました。

だけどね。

時が経つうちに文通が途絶えたりするのよね。
そして再会なんかしても、かつての温度とやっぱり違ってたりする。
どっかで冷めた感じが互いにあったりして、もうそれぞれの道を歩いてるんだなって諦めて。

(ああ、お釈迦様の言う通りなんだ。
やっぱり、永遠の友情なんてものはないんだ)

って。
悔しい思いを何度もしました。
いまは枯れ葉が落ちるから新芽が芽吹く。
別れがあるから、新しい出会いもある。
なんて思ったりもしますけど。
これもまた真理なんですね。
人間て切ないですね。

それでは聞いてください。始まりの別離。

5,アゲハ Swallowtail butterfly
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

学校を休んだ日の朝に
いつもの公園
こっそり靴を履き 向かった
雨もあけて
止まってたしずかなブランコの
下の水たまりは
鏡のようだね アゲハが映った
空が見え 雲の切れ間から
幾筋も光が差し込む
アゲハ どこにいるの
立ち上がる 土の匂い

忘れたくなくて また来たんだ
大人になったボクは
冷たい鉄棒 温かい手 なじんでく
嬉しくて 悲しみの複雑
アゲハのはばたく羽
すべては移ろい
瑠璃色 まぼろし
弧を描く眩しいブランコ
にぎやかな いつもの公園
アゲハが消えた あの日
あと戻りできない

空が見え 雲の切れ間から
幾筋も光が差し込む
それが見えた奇跡
立ち上がる 土の匂い
立ち上がる 土の匂い

【ヨシノのからの言葉】

わたし小さい頃からアゲハが好きでしてねぇ。
なんといっても綺麗でしょ。
キアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ。
あのなんとも言えない、色や柄。
それを捕まえたりはしないで、ふわふわと飛んでるのを見てるのが好きでした。
蝶の道ってみなさんご存知かな?アゲハって、毎日、同じ時間、同じ場所を飛ぶの知ってました?
時間帯によって道は変わるんですけど。

その飛行ルートは、蝶の道って呼ばれてるんです。
試しに近所の公園でアゲハを見つけてごらんなさい?それでずっと見てなさい。
するとね、ほんと、おんなじところをアゲハは何度も往復して飛んでますから。
アゲハは明るさが細かくわかるんですって。
というのもね。
かつて森林の奥深く、暗い場所に生息していた蛾がアゲハのルーツでね。
その蛾の中から、こんな暗いところは嫌だ、明るいところに出ていこうって、
華やかに進化したのがアゲハ蝶なのよ。
だから、明るさに対してはとても敏感なんだって。
くぅー、これだけで、わたし泣けてきます。

でもどうして、あんなにきれいなフォルム、色になったのかしらね。
神様の仕業ってすごいですよね。
「見た目より、中身が大事よー」なんて言うヒトいますよね。
わたしにもそうやって慰めなのか、声かけてくれるヒトいます。
わたしは、やっぱり、見た目がきれいなものに敵わないなって思います。
中身は人間が作るものだけど、見た目っていうのは神様が作るものだからね。
神の手がかかってるものには崇高なものが宿ってますね。
アゲハが蝶の道を飛ぶ理由ってよくわかってないらしんだけど、
オスがメスを探すためじゃないかって言われてます。
飛んでるのはもっぱらオスなのよ。
メスはめったに飛ばないで、葉の裏に隠れていたりする。
決まったルートを飛んでれば、たまに飛ぶ同じ種類のメスに遭遇する確率が高くなるからね。

神様が作る世界って、突き詰めると男と女の営みがすべてなのよね。
神様はなぜ、わたしみたいなのをお創りになられたのでしょうか?

それでは聞いてください。アゲハ。

6,硝子の欠片 Piece of glasses
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

船は静かに 波止場に止まって
ボクと君との 距離をつないでる
ポケットの中 硝子の欠片は
いつも一緒に 歩いたあかしさ
君と話した 星を追いかけ
ボクは選んで 船に乗る
君が笑って『じゃあね』って言った
ボクは黙ってうなずく

雨が降って 雪が降って
それでも船は帆を上げる
空を見れば そこには宇宙
硝子の欠片が

船は静かに 港を離れてゆく
ボクと君との 距離を割いてゆく
ポケットの中 硝子の欠片は
いつも一緒に 眠ったあかしさ
君は 叫んで 船を追いかけ
ボクは背を向けて うつむいた
君が遠くで『ヤだよ』って言った
ボクは初めて泣いた

君のことを 思い出せば
涙は落ちて 星が降る
空を見れば そこには宇宙
同じ星を見ていた

雨が降って 雪が降って
それでも船は帆を上げる
瞬く銀河にはボクラの
硝子の欠片が

雨が降って 雪が降って
それでも船は帆を上げる
瞬く銀河にはボクラの
硝子の欠片が
瞬く銀河にはボクラの
硝子の欠片が

【ヨシノからの言葉】

ある夏に礼文島に行ったことがあります。
海に断崖絶壁がそびえ立っていて、島の高台にはそこかしこに高原の花が一面に咲いてる。
ほんと天国かと思わせる光景でした。
島に何泊かして帰るとき、不思議な歌を聞きました。
小さな港に帰りのフェリーが停泊してるのね。
そこに多くの若者が集まってて、おそらく見送りに来てるんでしょう。
ハグをしたり、泣いたりして、別れを惜しんでるのる。
そしていよいよ船に乗り込むと、岸にいた若いヒトたちが歌って踊るのよ。

♪遠い世界に旅に出ようか
♪どんぐりころころ どんぶりこ
♪ギンギンギラギラ夕日が沈む

そして船が港を離れるでしょ。
船と港をつないでいた色々なテープが散り散りになる。
汽笛と波の音に混じって、「また帰って来いよー」と悲しい叫び声が追いかけてくる。
そしたら、見送られるヒトたちも船の上で歌って踊り返す。

♪遠い世界に旅に出ようか
♪どんぐりころころ どんぶりこ
♪ギンギンギラギラ夕日が沈む

あとから聞いたら、ユースホステルに泊まったヒトたちの儀式なんだって。
島だとね、船が岸に着く、それが出会いの始まりだし、船が島から離れる、
それが別離って、はっきりしてる。
そして6月から9月の夏の間しか、礼文島にヒトはほとんど訪れないから。
それでひと夏の出会いと別れを大事にしようと儀式は始まったらしいのね。
なるほどなって思いました。

それでは聞いてください。硝子の欠片。

【収録曲】

7,ママは泣いた My mother is crying
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

この道はいつも 手をつないだね
すねたりおどけたり はしゃいだけれど
春になり 夏になり コートを着る頃
なぜだかあなたを そっと遠ざけた
夢中になるのが 怖くなったのよ
無償の優しさも わたしには辛くて

この道を曲がって 小さな口づけ
あれから連絡も 取らずにそのまま
プラタナス並木は 涙色の風
十年と二ヶ月が過ぎたわ キスから
ごめんねも 言えずに
幸せになれたの
あなたは 幸せに暮らしていますか?

今はわかる あの時の恋が
幼いわたしを 成長させたの
この道を歩く 小さな手をつなぎ
恥ずかしいから 空を見てた
すぐにわかった あなたの匂いが
風に乗って 届いたの わたしに
慌てて 探したけど いるはずもなくて
ママは うずくまり 泣いた

あなたは この世にいない 気がした

【ヨシノからの言葉】

かつて世田谷の保育園に勤めておられて、
のちに絵本『いやいやえん』や『ぐりとぐら』を書かれた
作家の中川李枝子さんのお話だったと思いますが。

保育園では、お弁当の時間になると、子どもたちはお母さんの自慢話で盛り上がるんですって。
まずはお母さんの作ってくれたお弁当を見せて、すごいでしょ?ってところから始まる。
子供たち「すごーい」ほかの子供が「うちのママは英語ができるんだよ」と言うと、
子供たち「すごーい」っていう。
また別の子が、「うちのママはここにほくろがあるんだよ」と言うと、
やっぱりみんな子供たち「すごーい」。

またまた別の子が「うちのママはゴキブリをスリッパでたたいたんだよ」って言うと、
子供たち「すごーい」。

子供にとってお母さんは、何だって自慢なんだと。
それだけで、わたしなんかおいおいと泣けてきます。
子供ってなんて健気なんだろうって思いません?

でもね。
わたしは、そのお母さんのことも気になっちゃう。
だって、お母さんていったって、ちょっと前までは小さな女の子なのよ。
虫が苦手だったり、ピーマンが嫌いだったり。
フリフリのスカートがお気に入りで、木べらをマイクにして歌ってみたり。
マジックペンでマニキュアごっこして、怒られないかとドキドキしたり。

それが思春期になって、初めて恋をして、そして男を知って、
よくわからないまま初めての結婚をする。
やがて初めての妊娠をし、初めての出産をし。
初めてのおっぱいをあげて。
生まれた子供はママを絶対的なものだと思ってるけど、
ママにとっては初めてだらけで、不安だと思う。
わたしには、よくわからないことだけどね。

動物がもともと持ってる母性っていうもので、もちろん乗り切ってしまうものなんでしょうけど、
ふとしたときに、ママも少女に戻ると思うの。
風がふと吹いた時に、ふと少女に戻ってしまう。
わたしはママなんだ。
だから少女に戻ってはダメなんだと思うかもしれない。
だけどなぜかふと懐かしい風が吹いて少女に戻ってしまった。
子供の前で。
そういうことってあると思う。
あまり見かけないのは、見せまいってしてる母親の意地からだと思うのね。
そんな歌です。

それでは聞いてください。ママは泣いた。

8,幕開け Dawning of an era
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

世の中は、腐ってるさ
あたしもね、ほんとそう思う
だからそんで 神様怒って
悪人を 淘汰したのね

心配はぜんぶ御無用
あなたはさ なんとかなる
笑ってよ あなたの時代よ
過去なんて どっちゅことない

神様大掃除 下界大掃除
冷たい闇がりに スポットが差す
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕が開けた
天も地も 穢れの極み
あたしもね 染まっていたわ
だからそんで 神様怒って
天誅が 下ってしまった

さよならは いつも突然
予測不能 不意打ちなの
生きている それは苦しみね
過去なんて なんくるーない

愛別離苦(あいべつりく)
怨憎会苦(おんぞうえく)
求不得苦(ぐふとくく)
五蘊盛苦(ごうんじょうく)

神様大掃除 下界大掃除
新しいステージ 緞帳が上がる
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕が開けた
宇宙(そら)は回ってる 星は流れてく
温かくて明るい 幕開けの今

【ヨシノからの言葉】

2020年ももうじき終わりますが、まぁまあ、こんなシュンとなる年になってしまいました。
どうしてこういう事態になってしまったんですかね。
細かいことはいろいろですが、わたしは、要するに、神様の大掃除が入ったんじゃないかと思います。
どこそこの特定の神っていうんじゃないですけど、
どっか現世とは違うどこか見えない世界っていうのはありますよ。
そこの力が働いたってことです。

要するに、ここ何十年良かれと思ってやってきた、いろんなやり方が傲慢だったんじゃないかしらと。
だからこの機会に悔い改めないとだめなんじゃないですかと。
だけど人間て、一旦成功したヒトは、改心なんかしませんからね。
とくに商売で成功したヒトは止めらんないですよ。
執着しちゃって。
若いヒトは自分のやり方を信じて、突き進めばいいのよね。

これから景気が落ちるだけ落ちていくでしょう。
そんなとき損得勘定でやってたら、ますますロクなことにならないはずです。
だってさ、こうやれば儲かる、なんてセオリーあります?
新しいアイデアはいっぱいあるでしょうけど、社会はまだ古いですからね。
実際のアイデアを1センチ動かすのに、見えない経費がすごくかかっちゃう。
だから、なかなかそう簡単にはいかないと思います。
もしやるなら損するけど、やるんだとしないとね。

アイデアはある、だけど損はいや、だからやらないと、何もしなければ世の中は止まってしまいますね。
「損得なんか関係ない、もうこれをやらずにはいられないんだ」ってヒトがいて、
そのヒトを手伝うヒトがまたいて、それでようやく新しい時代に1センチ進むわけです。
まぁ大掃除は、今回のことくらいで収まるかわかりませんよ。
まだまだ、ドラスティックになにかあるんじゃないかなって予感もします。
いつ改心するのか。
わたしは、それは時期の問題だけだと思います。

それでは、聞いてください。幕開け。

9,愛のつぼ焼き Turban shells
作詞 エトワール★ヨシノ 作曲 マルグリット・モノー

いつも こんなことを考えているのよ
あなたがいるその
真っ青なお空にむかって
わたしは「だーれだ」って
腹の底から叫ぶの
するとあなたは その優しい笑顔で
「誰だろ もしかしてヨっちゃん?」
ってはにかんだりする
あなたが大好きだった
江の島の堤防の屋台の
そのつぼ焼きを私に差し出して
「ヨっちゃん指先が熱いよ あっち」
って耳たぶをつかむわね
そんな あなたに会いたい

あなたの熱い手で
あたしに食べさせて
ララふたりだけの
愛のつぼ焼き
魂が叫ぶのよ
熱いつゆがくちびる
もいちど二人は
肩寄せターバンシエール

バンドネオンに 灯がともる
聞こえるムジカ
フラフラフラリン
テケテケピョンピョン
踊りましょうよ
踊りましょうよ
あなたとふたり ムジカに合わせ
体引きよせ 浜辺にひとり
ふたりはターバントワイライト

あなたの熱い手で
あたしを引き寄せて
ララふたりだけの 愛のつぼ焼き
魂が叫ぶのよ
熱く濡れるくちづけ
もいちど二人は
肩寄せターバンシエール

【ヨシノからの言葉】

〜シャンソン喫茶エトワールでのオープニング〜

ようこそ、みなさま、喫茶エトワールへ。
わたくしはここの女店主、エトワール★ヨシノでございます。
こんなに少数の方にお越しいただいて、感謝感激でございます。
ありがとう。
今日は、たっぷりと6時間(笑)、わたくしの歌を、みなさまにお聞きいただきたいと思います。

あっ、ここ笑うとこで、さらに拍手のポイントです。

私はこちらで、40年あまりシャンソンを歌っております。
シャンソンとは『歌』という意味でございます。
イタリア語では、カンツォーネ(Canzone)、スペイン語ではカンシオン(Cancion)となりますね。
このシャンソン。
一つの特徴といたしまして、メロディよりも歌詞が重要なんだということです。
シャンソンの歌詞は、日常的なことばを使いつつ、歌がストーリーになっていることが特徴なのよね。
詩人シャンソニエの書く言葉は、鋭いエスプリ風刺を含んでいて、気のきいたストーリーになっていなければなりません。
このシャンソニエに求められるのは、歌がうまい下手じゃなくて、
ましてや顔の良し悪しじゃなくて(笑)。
そりゃ歌がうまい美人に越したことはありませんけど、
歌をどのように解釈し、自分の言葉で聞き手に伝えるか、その一点が大事なんでございますの。
わたしはシャンソニエとして、みなさんに「生きることの楽しさ、素晴らしさ」をお伝えしたい。
その思いひとつで40年この場所でやってきたんでございます。

それでは、ひとまず、お近づきの印としまして、一曲お届けしましょう。
愛のつぼ焼き。

10,亡き空に、オロール Talking with my father
作詞・作曲 エトワール★ヨシノ

月あかり プラチナ町
とおくに濤聲(とうせい)
聞こえてる 父は遥か
眠るよ どこかで

話したい 独り口
窓ガラス 雪曇り
忘れない 父は遥か
眠るよ しずかに

朝も夜も星も
ループは幾重にも
紙縒り(こより)を紡いでゆく
アパートの階段 乾いた足音
書きかけの手紙 破き
見ていてほしい
亡き空に オロール

エメラルド コバルト町
にぎやかなオロール
ありがとう 父は遥か
眠るよ どこかで
話したい これからを
マグカップ ミルクティ
懐かしい 父は遥か
眠るよ しずかに

朝も夜も星も
ループは幾重にも
使命はつながってく
針落とすレコード 鳴いてるオルガン
笑顔の写真ラララ
見ていてほしい
亡き空に オロール

天に瞬く オロールの下で
父よ話したい
父よ会いたい
森羅万象 享けた魂
挫けずに 道を生きる

天に瞬く オロールの下で
父よ話したい
父よ会いたい
森羅万象 享けた魂
挫けずに 道を生きる

【ヨシノからの言葉】

おとうちゃんとママは、横浜の元町あたりで小さな喫茶店をやっていて。
アタシはそこで育ったの。
港で働くヒトを相手にした喫茶店でね。
珈琲をサイフォンで淹れて、一杯200円て、そんな店だったのよ。
お酒は出さないの。
それはおとうちゃんが下戸って言うこともあったけど、
ホント言えば、ママが酔ったお客にモテるのが嫌だったのね。
おとうちゃんは、あれで案外ヤキモチ焼きだったから。

あのおとうちゃんに、なんでこんな美人が嫁に!?って横浜の七不思議の一つだったからね。
ママは、映画女優にならないかって、プロデューサーにしょっちゅう口説かれる美人だったからね。
ママの肌は真っ白で、ほんと白菊みたいにきれいだった。
あたし?フフ、あたしはザンネン。
おとうちゃん似よ。
見りゃわかるでしょ(怒)

店はね、忙しかったのよ。
あさは6:30に港湾のヒトが入ってくる。
夜は酔った後のお客が、コーヒーを飲みに来たわ。
私もずっと手伝わされたわよ。
人雇う余裕なんかないもの。
勉強なんかする暇ないの。
小学生の時から紙ナプキンを折ったり、パンをスライスしたりね。
当時は出前というのもあったから、近くの会社にアイスコーヒーなんかを自転車で届けたりするのよ。
ラーメン屋のおかもちに、アイスコーヒー入れてね。
クリームソーダなんてアイスが溶けたら怒られるから必死よ(笑)。

家族はもうずっと仕事。
家族で、のんびりするなんてなかったわよ。
運動会のときも親は見に来れないから、校長先生の横でゴザひいてお弁当だった。
想い出と言ったらね。
歓楽街のボーリングに行くこと。
何年かに一度、台風が上陸するでしょ。
すると港湾は封鎖になるから、そうすると店開けてても誰も来ないの。
そんなときは、おとうちゃんが、「いくぞ」ってボソって言う。
ハマボールは夜中までやってたから、そこに店を早閉めしてタクシーで行くのよ。
ママは、「2ゲームで帰るわよ、今日はなんにも稼いでないんだから」、って何度も言ったわ。
タクシーの窓から見える、ネオンの光景は今でも忘れないわ。
嵐で誰も歩いてないネオン街は、私たち家族のものになったような気分だった。
でも決まってね、ボーリング場に行くと、知り合いのお客さんがいるのよ。
酔っぱらって美人のママに絡んできたりしてね。
それで、酔っぱらいのオヤジたちとボーリングすることになるのよ。
せっかく家族水入らずだったのに、結局、店にいるときとおんなじ。
おとうちゃんもママもお客さんの前では、よそ行きの顔になるから。
それが寂しかった。

最期、おとうちゃんは、あっけなく死んじゃった。
それが後悔と言えば後悔ね。
おとうちゃんとは、もっといろんなはなしをゆっくりしたかった。
いまでもそう思うわよ。

歌います。亡き空に、オロール。

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