これはずっと内緒の話し

小さなハッとすることをみつけると、
嬉しくなって、誰かに言いたくなります。

寒い寒いって夜道を帰ってて、
ふっと風向きが変わって、梅の香りがして。
あれ、あれあれ、どっかに梅が咲いてるのぉー?

「ウメー、ウメー、ドコー。
呼んだって返事なんかしないか、ククッ」

ただ、そういう小さなハッは、誰かに話しをしても、
だからーって言われるので黙ってしまって、
いつの間にか忘れてしまうものです。

小さな町に、小さな蜂蜜の専門店がありました。
軒下にズラーッと十種類ほどの蜂蜜が並んでいて、
どれも試食をすすめています。
こちらのお味はフルーティーで女性に好まれます。
こちらは濃厚で力強い甘さが特徴ですよー。
そちらはヨーグルトで、あちらはトーストに。
店員さんがハチミツの個性を親切に説明してるんですね。
で、どれどれ、と味見してみると、これが確かに違う風味なんですね。

へぇー、こんなに違うにょー。
そしたら隣の女子がその隣の女子に、
ネッネッ、コレ、ウワッ、ゼーンゼーン味チガウヨー、
ハチミツナノニィー味チガウンダカラー
ホントー、ハチミツナノニィー味チガウー
なんて言ってる。
でね。このフレーズにハッとしたんですね。
ハチミツの味には、いろんな違いがある。
それは驚きでしたが、考えてみると、当たり前です。
集めてきた花が違えば蜜の味が違う。
蜜柑、ジャスミン、レンゲ、
花が違えば、蜜の味が違うに決まっています。
ハチミツ博士のこまかな突っ込みは、
この際、ヒラリマントでかわすとして、
ハチミツ、ハチミツっていうけど、
ハチミツは蜂の蜜じゃなくて、花の蜜なんです。
そのことに、この年になってハッと気づいたのです。
そう思ったらハチミツという名前が、
ちょっと嫌いになりました。
だって、これは、とても紛らわしいネーミングですよ。
いけませんよ。
間違ってますよぉー。
ハチも確かに偉いよ。ハチはこの際、悪くない。
準主役です。

けれど、でも、だれが一番偉いかって、
そんなの、主役は花に決まってるじゃないですかぁ!
蜜を作ったのは花なんでしょ。
だったらハナミツじゃなきゃいけないでしょーがー。
それをハチミツだなんて、ひどいよ、あんまりだよ。
ハチミツは今すぐ「ハナミツ(ハチによる)」に変えるべきで、
それができないなら、
牛乳は、絞って集めたきたのがニンゲンなので、
人乳にすべきだし、
焼き鳥は焼いたのがニンゲンなのだから、
焼き人にすべきだし、
馬の糞は、馬がしたっていうなら、
馬糞にならなきゃいかんでしょーがー!!

「ハチミツナノニィー味チガウンダー?」

小さなハッとすることをみつけて、
嬉しくなって、誰かに言いたくなりましたが、
これはずっと内緒の話し。

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