井川「えーマメヒコの井川です。今日はクルミドコーヒーのスタッフと
マメヒコのスタッフに集まってもらって、
子どものころのおやつについて聞いてみたいと思います。
というのも。
いまここでこうして働いてる皆さんは、やはり少なからず、
小さいころに食べたおやつがあったから、今ここにいるということありませんか?
あのおやつがあったから、いまわたしはここにいるんだと。
ボクには四歳になる娘がいるんだけど、
娘やその友人、小さな女の子達がほんとうにおいしそうに、
楽しそうにおやつを食べてる。
その光景はまさにほほえましくて、それを見ると、
もしかしたら、この女の子達が大きくなって、うちで働いてるのかもしれない。
大人になって斜に構えちゃってるけど。そう思うことがあるんだよね。
おやつの記憶って言うのが強く残っていれば残っているほど、
この仕事を選んだ理由って言うのがはっきりすると思うんですね。
とくにマメヒコもクルミも全品スタッフが手作りしてるわけで、
そういう店をあえて選んでるわけだから。
そういう話を聞きたいと思います。それでは一番前のあなたから」
「わたしの子供のおやつですか・・・。
えっと。祖父が趣味で畑をやってたので、
すいかやいちご、みかんなどその季節の果物をたくさん食べてました!」
井川「すごい。東京ではありえないね」
「今考えると恵まれた環境ですね♪
スナック菓子とかはあまり食べさせてもらえなかったかな。
んー、そのかわり母がケーキをよく作ってくれましたね。
記憶にあって大好きだったのは。
ベイクドレアチーズケーキ。
アップルパイ。
それと、プルーンとくるみのケーキ!!!
くるみが大好きでこの店を選んだのはそのケーキの影響です」
井川「なるほど。子どものころに食べたおやつがいまにつながってるわけね。
ほかに?」
「私のお母さんは、よくバナナケーキとカスタードプリンを作ってくれました。
バナナケーキもカスタードプリンもかなり大きくて。
計りも使わず かなり大胆に作ってたな。
学校から帰って。
家の玄関を開けてケーキの匂いがした途端、台所に直行して、
クンクン匂いをかいで、
早く食べたい気持ちを高ぶらせながら、今日はラッキーデーだ!と嬉しくなってました。
わたしにとってバナナケーキとカスタードプリンは
お母さんの優しさを感じるもの、
幸せなもの、
スペシャルなごほうび
っていう感じです」
井川「ふーん。プリンっていうのは、卵だけあればいいから簡単だしね。
プリンがあたしにとっておやつだっていうひと?」
「はい。わたしにとってもおやつといえば、母親の手作りプリンかな。
しかも出来立ての、あったかいところをぱくり!
というのが好きでした。
いつもは冷たいプリンがあったかいという衝撃と、
母の手作りということでテンションが上がって、
かなりの量を作ってもあっという間に食べちゃいました。フフフ。
なんでもないおやつが、手作りの魔法にかかって、
おいしくなるということ。
そのことをこのときに知ったと思う」
井川「なんでもないおやつが、手作りの魔法にかかっておいしくなる。
カフェをやってると、この手作りの魔法というのがどこかなくなってしまうよね。
おいしいとか。おいしくないとか。
そういうことじゃなくて、
誰のために作るのか。誰が作っているものなのか。
母親の手作りのおやつというのは、そういうことがはっきりしてるから、
今でもぐさっと心に残ってる。母親とおやつについて他にあるひと?
はい、きみ」