今週は、クレームについて。WEBニュースを見てると、ネガティブなニュースがイヤでも眼に入ってきますね。なるべく見ないようにしている井川さんですが、見てしまうと、イロイロト云いたくなる性分なようでして。
「辛かったとき支えてくれた作家、作品へのお礼状」
イカハゲネーム くつなっこ
私は新卒で出版社に入社し、希望していた雑誌の編集の仕事を始めまし た。その後、ご縁があり違う業界へ転職したのですが、編集者時代は新卒らしく、仕事の楽しさと大変さを同時に味わった思い出があります。
私が働いていたのはIT 系の出版社だったこともあり、編集者は男性が多く、女性の編集長がいませんでした。夢にあふれていた新卒の私は、「自分が初の女性編集長になったりして」とバリバリ仕事に向かう日々で、忙しくはありましたが、それ以上にやりが いを感じていました。
仕事の評価は、担当した記事が読者アンケートで支持されたかどうかが全てです。そして、編集者全員が持ち寄った企画が会議にかけられ、次の特集や連載が決められます。企画が通れば自分の担当するページが増え、その分、給料も上がるという明快な方針でした。
しかし、新人がそうそう簡単に仕事で成果を上げられるものではありません。逆に、ちょっと調子の良い時には先輩社員から妬まれて、あからさまに足を引っ張られることもありました。そんなときは、残業中の深夜に、オ フィスのあった赤坂の坂道を泣きながら一周したものです。仕事には慣れてきたものの、なかなか自分の成長が実感できず、辛い時期でした。
そんなときに出会ったのが安野モヨコさんの描く「働きマン」という漫画です。「働きマン」は、週刊誌の編集部で編集長を目指し、バリバリ働く女性 が主人公で、その周囲の人物を含め、さまざまな仕事観が描かれています。
たまたま自分と境遇の似た主人公だったので、私も彼女と同じように悩み、また仕事によって心動かされることで、ずいぶん勇気付けられました。 社会に出て働き始めたとき、この作品に出会えてよかったと思います。
それ以来、「働きマン」は仕事人としての私のバイブルです。
イカっ子
生涯一冊しか本を持つことが許されなかったのなら選ぶ一冊があります。その本との出会いは、ある TV 番組を通じてでした。
その時、私は失業中で住むべき家もなく、仕事が見つかるまでは家も探 せない状態の為、ウィークリーマンションで生活していたのです。
その 2 年前、トランク 1 つでダンスの勉強の為に NY に行きました。そして同じトランク1つで日本に戻ってきたのです。
本当はまだ NY にいたかったけれど、潮時だと感じて帰国したのです。
自ら、全てを振り切るように日本を飛び出した手前、北海道に住む両親 や、千葉で結婚した姉、友達にも簡単には頼れない。
なんとかしなければと思っていました。その狭い殺風景なウィークリーマンションの一室で、分厚い求人誌を見な がら私は溜息をついていました。この求人誌の中に興味をそそられる仕事は何 1 つない。身体は疲労骨折を二箇所も抱えて、好きなダンスも出来ない。 でもそんな事を言ってる場合ではありませんでした。
所持金は尽きかけて、タイムリミットは 1 カ月を切っていました。行き詰まる想いと夜の静寂に耐え切れずに TV を付けたのです。
TV には高齢のアメリカ人の紳士が画面いっぱいに映り、誰かと対談していました。その老紳士の知的な佇まいに惹かれて、最初はなんとなくTV を観ていました。
しかしその紳士がただならぬことを言っていることに気付き、番組が終わる頃には、紳士の言葉によって息を吹き返したような気持ちになり、活力を取り戻しました。
その対談が書籍化されていることを知り、翌日、本屋に駆け付けてその一冊を購入したのです。
それは、神話学者のジョーゼフ・キャンベルと、ジャーナリストのビル・モイ ヤーズによる「神話の力」というタイトルの本でした。私が観た番組は、ジョーゼフ・キャンベルの追悼番組だったのです。 対談場所は大好きだった、NY の自然史博物館。
私は直接、紳士から遺言を授かったような気持ちになりました。
「最も暗い時にこそ、光がやってくる。」という一節があるのですが、その言葉通り、もしあの時、私が行き詰っていなかったらこの一冊に出会えた のだろうかと思います。
あれから 20 数年経った今も、この本の力は色褪せることなく、どのページを開いても響く言葉が見つかる、私にとっての運命の一冊なのです。
イカハゲネーム ワトソンマン
わたしの支えになった作品は、井上雄彦さんの「SLAM DUNK」です。
わたしは母方からは久しぶりの孫、父方からは初孫として大切に育てら れてきました。
しかし幼稚園に通うようになると、右耳の聞こえが悪いせいもあって皆についていけない、家ではちやほやされるわりに自分は劣っていると感じる ようになりました。
小学校に入学すると下町と高級マンションの子供たちが混ざり合うような 学校で、様々な習い事や経験をつんだ同級生と一緒になり、ますます劣等感を感じていたときに読んだのが、「SLAM DUNK」でした。
「SLAM DUNK」では、背が小さい、背が大きい、初心者、バスケは上手だがコミュニケーションがうまく取れない、人柄は良いが試合には出れない、 一度ドロップアウトしてしまった等々各キャラクターはそれぞれ悩みや弱点を抱えていました。
けれどもその中で自分にできること、弱みであるが故の強みなどを発見し てバスケットボールをする姿に勇気をもらいました。
わたしもバスケットボールを始め、学校生活でもできないことよりも、何ならできるか、何が得意なのかに目が向くようになり、少しずつですが輪の中に入ることができるようになり、みんなのできることでみんなができているのだと感じられるようになりました。
少年だった僕に選択肢をくれた「SLAM DUNK」と井上雄彦さんには感謝してもしきれないくらいに感謝しています。
ハタケの朝、靄がかかりました。 台風が去って気温がぐんと下がったからです。 デントコーン畑に、朝もやの粒が光っています。 日常の中にも見落とさなければ、天国のような景色があると思います。 きっと天国にはボクラのような日常があるのではないでしょうか?
【お知らせ】
ディレクターがホイホイテーマを募集したのに、
みなさんががっちりいいお便りで応えてくださったので、
木曜収録版のテーマお便りの募集が一週ずれます。
今週10/11は「衣替え」をお送りする予定です。
来週10/15〆切で、「もしもあの時好きだと言えてたら」〆切来てたし、投稿できなかったなぁという方、ぜひお寄せ下さい。
再来週10/22〆切で、 「あなたと私の秘密」 を募集します。
毎週月曜深夜生放送用のなんてことない雑談や井川さんへの質問や、
作り上げるものへの感想など、随時募集中です。
お便りは、投稿フォームから受け付けておりますが、
マメヒコに行った際に便箋にしたためて、
お店のポストに投函するのもまた良しです。
【今週のテーマお便り】
【随時募集】
ホームページからだけでなく、
マメヒコ店舗でもお便り投函できますので、どしどしお便りお寄せください!