「ここから何か生まれるかも会議」が生み出したもの

「ここから何か生まれるかも会議」とは

2018年6月7日、「ここから何か生まれるかも会議」の1回目が開催されました。通称「ここ何」と呼ばれる、井川さんが書く小説の公開編集会議です。
以下は「ここ何」1回目のイベントページに記載してある(ちょっと長い)概要で、幹事役のG2さんこと辻貴之さんがこのような呼びかけをしました。

はじめまして。辻貴之と申します。
コルクの佐渡島庸平さんが始めた「コルクラボ」というコミュニティを考えるラボで、去年の1月からその作り方や運営方法などを学んでいます。
 
そんな中、偶然にも、分かる人(が多いと思うけど)には分かる面白そうなこの3人が、面白そうな「何かを生み出そう!」という機会に、ラボ仲間と出くわしました。
 
■希代の編集者である佐渡島さんの今の思い
小説を書いて欲しい!と思う人…それが、カフェマメヒコの井川啓央さん。
佐渡島さんは、井川さんの劇「ゲーテ先生」を数年前に見て以来、「人生で見た劇の仲で、最も面白かった!」といろんなところで語っています(僕も先日、ゲーテ先生に登場する「エトワール・ヨシノ」のシャンソンショーを見ました。その本気さと温かさに、打たれました)。
 
■井川さんは…
「あなたの体をつくる」という方針から、10年以上ぶれません。
でも、表現方法はカフェ、お芝居、映画など、多彩に広げています。
しかも、その全てが、ていねい。
そのていねいさにひかれたお客さんが、年間10万人も「カフェマメヒコ」に足を運んでいます。
 
■この集まりのきっかけ
そんな井川さんの書いた小説を読みたい!と、佐渡島さんが声を掛けたこと、です。
 
■角田さんと井川さん
2年に亘り、月1ペースでトークショーを行っています。
「コーヒー」「砂糖」など、身近なことをテーマに、その歴史から適切な使い方まで、「そもそも」について語りあう仲です。
そこで井川さんは、佐渡島さんと打合せを行うことになった際に、この楽しさをきっと共有出来る角田さんにも、声を掛けました。
 
■ということで、何の会議??
「何か」は、今のところ、佐渡島さんの編集による、井川さんの小説の執筆、となる見込みです。
内容は、ゲーテ先生が劇さながらに悩み相談にのる、という体裁の方向です。
 
■ここで、あなたにご相談
が、執筆する、と言い切れないのは、井川さんがまだ、完全に乗り気でないこと。
 
というのも井川さんは、ゲーテランドを作りたいというくらい、具体的な世界観を持っています。
また、何か表現物を作るのであれば「北の国から」のように、とも考えています。
でも、小説家ではないので、何をどのように書けば良いのか、が見えにくい状況なのです。
 
そこで、この壮大な思いと、目の細かい丁寧な進め方で、どんなものを作るか
…を、みんなで一緒に話しながら考えるための集まりが、この「会議」です。
 
角田さんも、佐渡島さんも、「こんにちは!」って、マメヒコへ足を運ぶ人。
そして、井川さんには、そうした「時間を使う」ことの意味や思いを、共有出来る人。
同様に、足を運ぶあなたと一緒に、井川さんに、どんなものをどのように表現してもらいたいかを考えられると、うれしいです。
それが共有出来れば、きっと、井川さんの筆も走る、と思います。
 
この面白そうな機会を、ぜひ、ご一緒に!

その後も「ここ何」は月1ペースで開催され、毎回、公開編集会議を見守るお客さんがたくさん詰めかけました。毎回井川さんの料理が振舞われるのも楽しみの1つになっています。

#1 2018年6月7日
#2 2018年7月10日
#3 2018年8月7日
#4 2018年9月11日
#5 2018年10月9日
#6 2018年11月13日
#7 2018年12月12日
#8 2019年1月22日
#9 2019年2月12日
番外編 本のフェス
#10 2019年5月14日
#11 2019年7月17日

佐渡島さんと角田さんの視点

「ここ何」では、佐渡島さんの編集者視点、角田さんのプロデューサー視点によって、井川作品の良さや、逆に改善した方がいい点など、さまざまな意見が飛び交います。例えば登場人物の背景情報が過不足なく描かれているか、キャラクターが立体的に立ち上がっているか、言語明瞭・意味不明瞭になっていないか、テレビドラマとは何が違うか、音読したときに読みやすいリズムか、など。井川さんが納得する指摘もあれば、そうでないものもありますが、「ここ何」を経るごとに確実に作品はよいものになっています。

そして、どの物語も、井川さんがマメヒコをやっていなかったら書けなかっただろう、というお話も。井川さんだからこそ書ける小説は、井川さんがマメヒコをやってきたからこそ書ける物語なのです。

そして生まれたもの

その後、「ここ何」と同じく月イチで「井川啓央さんを励ます会」というイベントも始まり、小説の進捗報告があったり、小説を書く井川さんを励ましたり、時にはお客さんが励まされたり、小説とは別の話が聞けたりという企画で毎回井川さんの創作活動に触れる機会となりました。

そして、この1年あまりの「ここ何」から、いくつもの小説が生まれました。
途中でタイトルが変わったり、登場人物の名前が変わったり、「ここ何」での反応を見ながら井川さんが何度も書き直し、書き足し、また書き直し、試行錯誤の連続で、ようやく本になるのです。

「LESSISMORE」

「ここ何」から最初に本になったのは「LESSISMORE」という短編小説です。もとは「裸足の金星」というタイトルでした。
物語は、優希の父親の七回忌という場面から始まります。そこから、学生時代に愛した瞬との再会、夫・卓也や家族との関係が描かれます。さらに重要な役どころとして、喫茶エトワールの女主人・ヨシノが登場します。実は「LESISMORE」は「エトワール・ヨシノ」という小説の一編という構成になっているのです。
完成した「LESSISMORE」は2019年3月に開催された「本のフェス」にて発売されました。

「レモンベーカリー」

「檸檬の棘」というタイトルで書かれた作品が何度も直され、初期の頃とは設定を含めてずいぶん様変わりしましたが、「レモンベーカリー」として完成しました。こちらは10月13日の発売を控えています。
この作品は、海沿いの丘に建つレモンベーカリーの開店準備中に起こる人間模様を描いた物語です。登場人物それぞれの抱える過去、そしてレモンベーカリーでの出会いによって動き出す人生を、移ろいゆく季節の描写に乗せて丁寧に描きます。

小説を書いて終わりではない

小説を書くのは井川さんです。それを多くの人に読んでもらうために、本にします。テキストをウェブサイトで公開するというのも1つの手ではありますが、紙をめくって読んでもらうことで、届けられる何かもあるはずです。
そのため、「LESSISMORE」の製本イベントを行い、みなさんにも表紙を仕上げるお手伝をいただきました。イベントの様子はこちらをご覧ください。「レモンベーカリー」も発売日となる10月13日に製本イベントを開催します。

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まだ生まれ続ける何か

井川さんは、新しい小説を執筆しています。「ここ何」をきっかけに小説を書き始め、試行錯誤を繰り返し、途中でメゲそうになったり、励まされたりしながら、読者の心にじんわり沁み込む作品を書き続けています。
ここから井川さんの小説家としての一歩が始まりました。ここからいくつもの小説が生まれ続けています。「井川さんを励ます会」から「イカハゲ」というコミュニティも生まれました。(そして「いかひこ」になりました。)読者の中にも、井川さんの小説を通じて、たくさんの何かが、言葉にできない何かが生まれたのではないでしょうか。
これからもその「何か」を追い求め、井川さんの創作活動に注目していきましょう。
次回、「ここ何」は10月29日開催です。

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