姉妹は何を思ったか

ボクが最も影響を受けたミュージシャンは、「ザ・ピーナッツ」。

物心ついてから、ピーナッツの歌に非常に感銘を受けてきた。そして、姉妹の生きざまを知るとね、この姉妹は何を思ったんだろうと考えずにはいられないんだよね。

愛知の常滑から出てきて、スカウトされ、18歳でデビュー。16年間、あらゆる歌を歌い尽くし、スパッと34歳で引退。
その後は、ふたりとも表舞台に立つことはなく、お姉ちゃんは71歳、妹は75歳で亡くなっている。

ザ・ピーナッツは、まさに高度経済成長の象徴のようで、この時代のヒト達の持つ、いろんなものに挑戦していこうという気概がある。歌は基本的にはポップスだけど、幅広いジャンルを歌い、彼女達自身が実験場として機能していたところが凄いわけ。

この頃は、世界は広いとプロパガンダされ、グローバリズムを面白可笑しく広めることに、なんの疑いもない時代だった。
その時代の最先端にいた34歳の二人の女性が、何故、パタッと引退してしまったのか?

ボクなりの考えだけど、ただ歌うことが好きなだけの少女が、次から次へと世界中の歌を歌わされることで、自分達の生活や、本来持っている何かを失ってしまったんじゃないかな。

日本がどんどん世界に進出することに、何の疑問も持たない時代。その流れに加担したくなかったんじゃないかな。ちょっとブレーキを踏みたい、このままでは何かが変わってしまい過ぎる、というのが、彼女たちの、どこまでも日本という歌い方から、ボクはそう感じてしまったんだよね。

そして、引退番組の最後に歌った「帰り来ぬ青春」という歌の歌詞が、何かを示唆している気がした。
歌詞の中で、ふたりは、歌手としての月日を、「歌うことと 踊ることの稽古のくりかえし」、「何かに糸ひかれ 目かくしをされたまま 私たちは歌って来た」と歌い、歌の終わりの方では、「もっと不思議な 素晴らしい一日の為に さよなら良き友 さよなら良き人よ」と歌っている。

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