「ヤマダストアー」について

ここ十年で一番衝撃を受けた事件が、先週ありました。
場所は神戸です。

神戸に展開しているヤマダストアーという
スーパーに出会ってしまったことは、
ボクにとっては大事件だったんです。
もうね。出会ったその日は興奮冷めやらず、
「MAMEHICOは、ヤマダストアーに身売りしたほうが、
スタッフもお客さんも幸せなんじゃないか」
と本気で思い詰めたほどです…。

ボクが出会ったのは神戸郊外、須磨離宮公園前店です。
店内は広くてとてもきれいなお店です。
新しくて、最近流行りのおしゃれスーパーといった外観です。

そもそも。
ボクはヤマダストアーの存在を知りませんでした。
店舗数も少なく、またボクたちの御影周辺にはなかったので
まったく知らなかったんです。
(5月に六甲アイランド店ができます。絶対行く)

だからヤマダストアーに行こうと思ったわけでなく、
ほんと、なんの気無しに寄ったところで、
入口から度肝を抜かれたんですッッッッ。

—-

縁起観
これが存在すれば、あれも存在する
これが生ずれば、あれも生ずる
これが存在しなければ、あれも存在しない
これが滅すれば、あれも滅する

—-

スーパーの入口にこんな難しいこと書くか?

縁起とは、どんなものも、それ単体で存在しているものなどないよね。
すべては関係のなかで存在してるんだよね、って意味ですね。

つまり、私達スーパーマーケットは、お客さん、取引先、
自分たちの関係の中にあるんであって、
私達はそれを心がけますね、って書いてある。

そりゃこんなことは、その辺のスーパーマーケットでも
似たようなことは書いてます。
ただよく見ると、お坊さんの絵とともに小さく書かれた文字は、
しっかりとした太ゴシックなんですが、印刷されたものではなく、
どことなく滲んでいて、もしかして手書きか?
という雰囲気を出しています。

印字すれば済むものをこれを手書きしているとしたら。
こんなめんどくさいことするのは、よほどの変態か…。
やろうと思っても、ちょっと真似できません。

もう入口からこの調子ですから、ここからあとはもう。
書きたいことがあり過ぎて、メルマガなんかじゃ収まらない。
絞って、二つ気になったことをご紹介します。

一つ目、ヤマダストアの自社ブランドもやしです。
一袋38円のもやし。
その袋の表に、こう書いてある。

—-

もやしを安く販売することは、消費者の認識を
安いまま定着させることに繋がり、
もやし農家の持続可能性に影響を与えると考えています。
必要以上に安いもやしの裏には、その価格で働く生産者がいることを認識し、
兵庫県下に僅かに残った生産者を守るため、
生産者に出来るだけ利益を還元し今後も適正価格で
販売していくことを目指していきます。

1袋あたり生産者へ渡す商品原価を
「「「「 2円増やしました 」」」」



ボクはもやしの袋を震えながら持ち、
しばらく立ち尽くして歩けませんでした。

みなさんが物を買うというその行動は、それ自体に意図はなくても、
結果として、小さな生産者が隅に隅に追いやられてしまっていますよ。
とヤマダストアーはもやしの袋に提言しています。

そして。
消費者だけが良い思いをして、もやし農家を苦しめているとしたら。
それは回りまわって、アナタの仕事を追い詰めてるのかもしれない。
アナタの子供や家族の可能性を奪っているかもしれないんですよ。
だって。
この世はすべて、縁起なんですから。

もうひとつ驚いたのは、パスタコーナーです。
(驚いたのは計り知れないほどあるんですよーー)

そこにあったのは、



姫路市喫茶店「ムッシュさん」監修の
茹で時間が13分もかかるパスタ(800g・約8人前) ¥358

姫路では知らない人はいないほど
有名な喫茶店「ムッシュ」さん監修のパスタです。
茹で時間が長めですが、まるで生パスタのようなモチモチ食感と
ガッツリとした食べ応え!
ナポリタン作るなら絶対太いのんがおすすめです。



裏面にはこうも書いてあります。



地元の喫茶店を保全し、地域の食の多様性を守る

労働集約産業である地域の喫茶店は労働人口減少の影響を受けやすく、
持続可能な経営の維持のために、
私達は地域の喫茶店の味を積極的に販売し応援することで
地域の食の多様性を守っていきたいと考えています。

「「「「 買い物は投票です。 」」」」

注意!
このパスタは、茹で時間が約13分もかかります。
覚悟してください(でも本当に美味しいです)



ボクは、パスタ袋を持ったまま、
店内でおんおんと泣きました。
泣いた涙が足元に水たまりになったほどです。

街の小さな喫茶店が無くなる。
それは地域の食文化の多様性を失うことなんだと。
それを食い止めるためにスーパーにできることはなにか。
そうだ「ムッシュ監修の乾麺」を売ったらどうか。

ボクは姫路の「ムッシュさん」を存じ上げませんが、
「ムッシュ、よかったな」と抱き合って泣きたかった。

物がコモディティー化しているなかで、
安くしないと売れないという世相。

そんななかで人と人との関係性を大事にしようよと
説く小さなスーパーマーケット。
ときにユーモアを交え、面白可笑しく情報を提示する姿勢。
生産から流通まで、社員全体を巻き込む力。
こだわりのPB商品しか並べないのではなく、
普通の商品も同じように並べて、お客さんに選択の自由も残す寛容さ。

なにからなにまでやられっぱなしの、
ヤマダストアーでした。
神戸の方はぜひ。

Archive
カテゴリー