昨夜のニュースに詩人の星野富弘さんの訃報がありました。
山田太一さん同様、とても影響を受けた先輩だったので、さみしい気持ちになりました。
星野富弘さんは、手足が不自由なため、口に筆をくわえ、絵画や詩の創作活動をされていました。
星野さんは群馬大学卒業後の1970年4月、体育教師として高崎市立の中学校に赴任。
赴任して間もなく、クラブ活動で空中回転の模範演技をしているとき、誤って頭から転落。
第四頸椎の骨折、頸髄を損傷し、手足が麻痺して状態になってしまったのです。
その後、群馬大学病院での九年に渡る闘病生活。
お母様の献身的な介護、そしてキリスト教の信仰によって、生きる力を取り戻し創作に励まれたのです。
病床で読まれた三浦綾子さんの小説に、とても救われたということをおっしゃっています。
三浦綾子さんはクリスチャンです。
「三浦綾子さんに『影響を受けた』というような表現はしたくないのです。真っ暗な、どこに続いているか分からない夜道を一人で歩いていたとき、明るい光を持って楽しそうに歌いながら歩いてゆく人がいた。その後ろ姿がいつも見えていて、行く方向が明らかになり、希望が与えられた。そのように感じています。今の僕があるのは、綾子先生のおかげといってもよいでしょう。感謝しています」
桐生の紫香邸の近く、群馬県の東村には「富弘美術館」があります。
ボクは星野さんの詩、ユーモアと鋭い視点を持つエッセイに、いつも励まされてきました。
肉体と精神がいかに深くつながっていること、信仰を持てることの強さ、希望とはユーモアだと教えてくれたのも星野さんです。
今日は星野さんの詩をいくつかご紹介して終わります。
ぜひ、機会があれば詩集を手にとって見て下さい。
—
線路に耳をつけて
近づいてくる 汽車の音を
聞いたことがある
地面に 張りついて
生きている 草よ
おまえには
この大地に 迫ってくる 足音が
聞こえるのではないか
教えてくれ
それは
人間にとって
嬉しい 知らせなのか
それとも
—
ひとは空に向かって寝ている
寂しくて空に向かい
疲れきって空に向かい
勝利して空に向かう
病気の時も
一日を終えて床につく
あなたが ひとを無限の空に
向けるのは
あの時から空がかわった
永遠を見つめよと
いっているのでしょうか
ひとは空に向かって寝ている
—
かなしみをうちに秘めて
苦しみも
笑顔にかえることができる
人はどこか
冬の花に似ている
—
雨を信じ風を信じ
暑さを信じ寒さを信じ
楽しみを信じ苦しみを信じ
明日を信じる
信じれば
雨は恵み
風は歌
信じれば
冬の枝にも花ひらく
——
合掌。