ローマは一日にしてならず

夏休みなので、単身イタリアに行くことにしました。
ローマ、ミラノ、フィレンツェ・・・。
今月末まで2週間の予定です。
昨日、成田より飛行機に乗り、
だからいまはローマにいることに、

・・・なっています。

ローマのホテルからこのブログを更新している、

・・・はずです。

そういう約束で、マメヒコをあとにしたのでした。
でもいま、ボクは成田のスタバでこれを書いています。
あのみなさん。
ボクは馬鹿です。
今さら改まることも無いのだけれど、ここはひとつ正座して、
はっきりと申し上げたい。

・・・ボクは馬鹿です。

昨日、成田に着いたのは午前10:00のことです。
フライトは13:35、成田発ローマ行きAZ785便です。
今思えば早く行きすぎたのかもしれません。
ギリギリで生きてきたボクにとって、
空港に3時間も前に着いたところで
何をしたらいいのかわからないのです。
ターミナルはロンドンのテロ未遂事件のせいでごった返しており、
チェックインカウンターには長い行列ができています。
そうそう、それを考慮して早く来たんだった。
久しぶりの成田はユニクロやツタヤなどのショップができており、
3時間程度つぶすには十分です。

でも、ボクの運命を変えたのはあの一枚のクジでした。
両替所でユーロに換金していたときに、
隣のアメックスカウンターの女の子が
ボクにクジを渡したのがすべての始まりです。

「よかったら引いてみませんか」

暇そうな彼女がくれたクジ。

「やったー、当たりましたよー」

当たらなくてもいいクジは
アメックスのボールペンが景品です。
緑と赤の2種類が選べるので緑にしました。
そのあと彼女は、出張ですか、旅行ですか、
アメックスを持つとこんなにいいことがあるんですよと積極的です。

「ボクも持ってるんです。それもゴールドカードほら」

「うわっ、うそー、ありがとうございます。
だったらだったら、もったいないですよ。
アメックスなら空港内のラウンジも使い放題だし、
帰りの荷物も一個まで無料で自宅まで送れるんですから」

ラウンジにはドリンク飲み放題のスペースと、
新聞、雑誌、ファックスが置かれ、
どことなく会員だけが選ばれたスペースを
使っているという意識が心地いい。

今思えば、このとき携帯に何度も電話が入っていたんです。
0476で始まる電話が。
でも成田の市外局番など
知らなかったもんだから無視したんですね。
これが二番目のターニングポイントです。
人生にはターニングポイントというものがあるんです。
でもそのときは気付かない。

瞬く間に12時30分です。そろそろ行かなければ。
ラウンジにあるすべての雑誌、新聞に目を通し、
アイス珈琲、コーラ、ウーロン茶を飲み、
行ってらっしゃいませと見送られ、
さぁ行かんパックス・ロマーナへ。
こんなにのんびりと旅をしたのは初めてです。
手荷物検査ですらなんとなく優雅な気分です。
なんでも余裕を持って行動するというのは気持ちがいいですね。

出国審査の長い長い長い列も余裕です。
日本人だから出国カードは書かなくていんだな、よしよし。
パスポートはカバーをはずしてっと。

「あなたチェックインまだでしょ」

そういわれたのは審査官にチケットを見せたときのことです。
定年間近の審査官の言っている意味がよく分からなかったので
聞き返します。

「ちょっとちょっとダメだよ、チェックインしないでここまで来ちゃ」

ボクが持ってるチケットには席番が印字されてないというのです。
どれどれ。あっほんとだ。
そういえば窓際にしますか、通路側にしますか
って聞かれてないな。

「あらあらスーツケースまで持ち込んじゃって、
こんなんで機内乗れるはずないでしょ」

そういえばスーツケースを持って
ここに並んでいるのはボク1人です。
フライトまであと15分。
夕暮れどきの海岸に静かに
波が打ち寄せては消えてゆく光景が浮かびます。
ヒグラシが鳴いている。
交番みたいなところに連れてかれて、
ベテランがあちこち電話してるけど
誰も出ない。

「ケッ、どいつもこいつも出やしねぇ」

そこに若いアンちゃんが来ました。
ベテランを叱っています。

「そんなことしたってだめですよオヤッサン。
どちらにせよここではチェックインできないんだから。
航空会社に戻すしかないんでしょ。
あと7分でフライト!じゃないですか」

事件は会議室で起きてるんじゃないんだっ、の織田裕二のようです。

「チェックインカウンターに走って!さぁ早く!」

「おっ、OK!わかった」

さながらボクの役はユースケ・サンタマリアでしょう。
長介の案内で長い列を疾風のように逆走するボク。
それもスーツケースを引いて。
みんながボクを振り返る。
きっとこのときのボクは、なんとなく嬉しくて笑っていたと思う。
ほんとにただの馬鹿です。
チェックインカウンターに着く。
そうそこは、もぬけのから。
明かりひとつ点いてない。
そりゃあんたそうだよ。
フライト2分前だもの。

今回お客様がご購入いただいたチケットは
格安周遊チケットですから、お客様による日付変更は一切できず、
もちろんフライト後の払い戻しなどできるはずもなく、
それでもどうしてもローマに行きたければ、
いますぐもう一度ご購入しなおしていただくほかありません。

今はすでに新たなチケットを購入し、
チェックインを済ませ成田のスタバでこれを書いています。
馬鹿につける薬はかなりの高額で、
成田で過ごした昨晩は相当ブルーになりました。

思い返せば、アメックスの女の子も、スピードクジも、
出国審査のオヤッサンもアンちゃんも、
航空会社も旅行代理店もうらんでも仕方なく。
飛行機に乗る前にチェックインしなかった男の、
あわれなよた話なのでした。
このあと何もなければ明日こそローマです。
ローマは一日にしてならず、なんて昔のヒトはうまいこと言ったね。

・・・バカ。

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