苦悩

こんな小さなカフェでも毎日やっているとそれなりに悩みがあるものです。

渋谷のマメヒコは食事メニューがないのかとお客さんによく聞かれます。
とくにランチどきはそんな声ばっかりで、ベーグルサンドはあるんですがというと
なんだ食うもんねーのかと帰られるお客さんも多い。
それは実は2年前の三軒茶屋でも同じで、当初のメニューは珈琲と煮豆だけでしたから、
なんだ食うもんねーやという失望になんとかこたえられないかとスタッフともども考えあぐねて、
ポークビーンズを作ったり、マメレットを始めたりしたのですね。
いまではおかげさまで、わざわざポークビーンズを食べに来られるお客さんもいらしたり、
マメレットが食べたかったのよ、やっと食べれて嬉しいわと
喜んでいただけるお客さんもいるんですが。

どちらもとっても人気メニューですが、諸般の事情により10月いっぱいで
三軒茶屋はマメレットもポークビーンズもおしまいにします。
諸般の事情とはなにか。

実は三軒茶屋店には厨房らしい厨房がない。
二畳ほどのところにコンロとオーブンがあるだけです。
スタッフは8人ほどいますけど控え所はわずか半畳しかない。
これではあんまりかわいそうだとこの夏、近くのマンションに控え室を借りましたけど。
そして冷凍庫がない。だから作りだめができない。

珈琲と煮豆を出す純喫茶がカフエ マメヒコをはじめるにあたってのイメージでしたから、
そういうレストラン並みの設備がそろってないんですね。
それでもお客さんがポツポツと少なく
スタッフも新しいことに燃えていたときはやれポークビーンズだマメレットだとがんばれたんですけど、
今のようにお客さんが連日ドドドドといらっしゃると、
どうしても仕込が一日の中心になるのですね。
大道芸のあったこの前の日曜日。
三軒茶屋はとってもとっても混みまして、その結果、なにもかもストックがなくなってしまった。
煮豆を作るにしても最低一日半程度かかりますから、
月曜日お出しするものがなにもかもなくなってしまったんですね。
それでヘトヘトに疲れて立てないスタッフと真夜中まで協議して
月曜日はやむなくオープンを遅らせました。
でもここのところそういうことがとっても多くお店は休みがちです。

お店にボクが行っても仕込み、仕込みで、スタッフが楽しく働いていない。
年中無休、朝8時からよる11時までやってますから、
仕込みに追われたスタッフは般若のようで、
ボクが考えていたマメヒコとまったく違うんですね。
これではどうかと思う。

「思い出すような味と空間を作り、たくさんの人の心を豊かにしたい。
なにげない毎日をもっと素敵に楽しく過ごしたい。
すべては気持ちいい空気と気持ち良い時間のために。」
というのは黒磯のSHOZOさんがカフェを始めるにあたっての言葉ですが、
ボクも同じような思いでマメヒコをはじめたんです。
だから、今のマメヒコを最初の頃のマメヒコに戻してみたくなったのでした。

11月に入ってフードメニューがなんの断りなしになくなっていて、
食事しようと思って入ってきたお客さんにはとってもとっても申し訳ないことをしてしまう。
でも、その分、もっともっとよくしてきたいところが
ボクにはいっぱいあって、スタッフも人間だし、ボクも人間だし、
全部はできないけれど、最初に決めたことを変えずにやっていきたいのです。

今年は去年より早く11月1日からクリスマスツリーを飾ります。
こんな小さなカフェでもボクには大きすぎる苦悩をツリーは癒してくれるのです。

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