餌付け
ボクが書いた「ぽうく」というお芝居の中に、餌付けに関する話があるんだけどね。
豚は、本来は野生のイノシシなんだよね。人間が餌付けすると、最初はおっかなびっくりのイノシシも、やがて餌を食べるのが当たり前になる。すると、イノシシは逃げなくなって、飼いならされ、退化していく。そしてどんどん肥えた豚になっていくというね。
餌付けは、家畜化する上での最初の一歩なんだよね。森に行くと「野生動物にエサをあげないで」と書いてある。野生動物自身が、自分で餌を獲る事をやめちゃって、自然界で生きていけなくなるからだよね。
こういう事が現代社会においてあるとすれば、ひとつはサラリー。毎月のお給料をもらい続ける事。安心、安定は生きていく上ではとても大切な事だけど、そうすると自力で何かをしようとしなくなるんだよね。
「ヒューマニズムの経済学」という本の中で、ドイツのレプケは、なぜヒットラーが暴走したのか、どうしてあのヒトをドイツ国民は選んでしまったのか。仮にヒットラーが存在しなかったとしても別なヒトが同じようなことをしたんじゃないか、そういう背景というのはあっただろうということで、人間は誰でもファシズムに走る傾向があることを指摘しているんだよね。
ボクらも、日本は愚かな戦争をしてしまったという教育を受けているけど、なぜ戦争を止められなかったのかと思う。それに、今、日本には、根無し草だと思っている若いヒトたちがたくさんいて、強い孤独が蔓延している。
サラリーをもらっていても、精神的な財産を持ち得ているヒトってどれだけいるのかな。
自分で何かを考えて行動するというヒトを増やさなくちゃいけない。やれる事だけでも工夫してやろうっていうヒトが増えなきゃダメだよね。で、そのヒトたちが集まって、お互い大変だけど頑張ってやろうやっていうことが必要で、それを実現させたいと思ってる。
野生動物の餌付けについて、ちょっとみんなに考えてもらいたいね。