勝ちさえすればいい、について

とある街の喫茶店で、となりの隣の席に座った若い男性二人。

20代前半な感じ。

「とにかく勝てばいいのよ。勝ちさえすればインだから。

勝ちさえすれば、あいつらだって、なんにも言わなくなるんだから」。

 

なにをやっても、ごちゃごちゃごちゃごちゃと

うるさいやつが組織にいるという。

そんなやつらを、ギャフンと言わせてやりたい。

そのためには、兎にも角にも、勝ちさえすればいい。

そうすれば、なにも言わなくなるんだと。

 

この世界は勝負であり、強いものと弱いものがいて、

すべてにおいて勝ち負けがある。

スポーツは勝ち負けがはっきりしている。

お金もそうだ。一円でも高く売れたら勝ち。

利益が残れば勝ち。

 

となりの隣でもやもやしながら聞いているボク。

 

勝ち負けとは、誰か見知らぬものが決めたルール。

その評価基準に照らし合わせて勝ち負けが決まるわけで、

そんなものルールを決めたやつが、

勝ちやすいに決まってるだろう。

勝ち負けにこだわりすぎた社会は不幸なヒトしか生まない。

 

「とはいえ、お金って大事じゃないですか」

と誰かが言う。

「とはいえ」、「とはいえ」とみんながいう。

 

「大事じゃないです」とボクはいう。

お金を稼げばスカッとすると思ってるけど、

ほんとはそうじゃない。

なににおいても自分の価値は自分が決めるんであって、

「誰か見知らぬものの決めたルール」に寄り添って、

勝った負けただの言ったところで、

それはそれほど大事ではない。

 

となりの隣は、

「互いにどんな汚い手を使ってでも勝ちましょう」

と固い握手をして、残った珈琲を一気にすすって店を出ていってしまった。

 

あなたの夢を叶えますほにゃらら、

こうやれば勝てますほにゃらら、

稼ぐなんてかんたんですよほにゃらら。

 

そういうとこは、みんな全部サギだからね。

ひっかかりなさんなよ。

空いた二つのカップに、ボクはそう言った。

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