母の予言について

ヒトが言うことを、ほとんど信じない性格です。
いつもはなしは疑ってかかります。

どこどこに美味しい店があるよ、なんてはなしも信じませんし、
だれそれがあなたのこと褒めてたよ、なんてはなしも信じません。
その逆もしかり。
巷ではマメヒコの悪口でいっぱいよ、なんてはなしも信じません。
四柱推命も血液型も信じない。

どんなはなしでも、自分で調べて納得しないと気がすまない、
めんどくさい性格です。

これはおそらく、母のせいだろうと思います。

ボクの母は、普通の主婦でしたが、いつも明るく、
そして自信たっぷりと、嘘ばかりを言ってました。

細かいことはほんと適当、事実はほとんどないと言った感じです。
それを何度訂正しても、一向に聞かず自信たっぷりと、
いつまでも間違っている。

ビートたけしと明石家さんまが、テレビに出てきた1980年代ごろかな。
グリンピースのさやから豆を出していた母は、
おもむろにテレビに映る彼らを指して、
「こんな下品な笑い方するヒトたちは、三年でいなくなる。間違いない」
と自信たっぷりにボクに言うのでした。

ファミコンが出てきた当時、
クラスの友達が持っているからほしいとせがむ弟に、
「テレビゲームばかりすると、子どもはみんな目が悪くなって困るので、
もうじきテレビゲームはどこも売らなくなる」と言いました。

ボクがおとなになって、マメヒコを始めたときも、
「うちは商売人の家系じゃないから、
あなたが水商売なんか始めても絶対にうまくいかない。
ただ借金だけが残って、一家離散するから止めた方がいい」と予言しました。

こんなこともあったな。
ホリエモンが世間を騒がせたとき、
「こういう歯に衣着せぬ若者はもっと活躍したほうがいい。
日本は頭のかたい爺さんばっかりだから。
あなたもホリエモンを見習いなさい」

言ってることに一貫性が無いようにも見受けられますが、
テレビの好きなタレントが、
言っていたことをなぞらってるという一貫性があります。

母はお友達からは「物知りの井川さんで通っている」んだそうで、
いつも自信たっぷり、嘘をボクに言ってきました。

うんと小さい頃はそんな母に、ボクもものすごく反発しましたが、
母と喧嘩するボクを見て父は、
「母親の言うことなんか真に受けるお前が馬鹿だ。
なんでも自分で調べろ」
とそんな口ぶりでした。

父も他界し、そんな母もまもなく80歳になります。
ボクも今年で50歳になる。
平等に年月が経ちました。

いまのボクを母はどう見ているのかと先日訊ねたら、こう言いました。

「あなたは小さい頃から、
自分の思ったとおりのことしかやらなかったし、やってきた。
だから、社会がどんな風になっても、生き延びる力があると、
ワタシもパパもずっとあなたの将来を楽しみにしていたわ」
と言いました。

さて、この言葉は信じていいものか。
嘘つきのパラドクスというやつですね。笑

ヒトを育てるのには、長い時間がかかります。

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