直線と徒歩旅行

人間というのは、不安から逃れられないですね。

今、いろんなことを事前に説明されるよね。例えば、病気になってこの薬を飲むと、こんな副作用があるとか、小学校3年生のうちから進学塾に行かないと御三家は無理だよとか、3歳からバレエを始めないと将来ものにはならないよとか、将来のために早めにいろいろやらせようとなるわけ。

失敗しないようなルートを慎重に選ぶとどうなるかというと、選んだ通りにはならないんだよね。何故なら、そこから先も選択肢は山のようにあるから。

何かここで一つ選んだら、最後にゴールがあるのではなくて、そこからまた次の選択肢があるだけだということに、みんな気づかないというのかな。

イギリスの文化人類学者で、ラインズという本を書いたティム・インゴルドというヒトが本の中で、輸送と徒歩旅行について挙げている。

輸送とは出発地点と到着地点という道を直線で連結し、荷物に変化を加えないように横断させる行為のこと。

一方、徒歩旅行は最終目的地さえも決まっておらず、歩みを進めるそのたびに、世界を知覚し、それと親密に関わりながら通り抜ける運動である、そう言ってるんだよね。

徒歩旅行とは、あなたはこういった人間で将来こうなるから、こうした道を通った方がいいという既定のストーリーから外れること。そして、いきなり出会ってしまう、いきなり何かを失ってしまう、そういう偶発的なものを取り込みながら生きることなのだと。

高速道路や飛行機のような輸送はとても便利だし、こうやったらお金が稼げる、そのなにが悪いんだ?と思う人もいるだろうね。ボクは、そういう風に自分の人生が輸送になっちゃうヒトのことをどうこう言うつもりはないけど、今、生きるのに違和感を持っているヒト、それは、あなたの人生は輸送だからではないですか? 

人生というのは出発地点と到着地点が決まってるのではなく、歩くたびに見える景色が違って、いろんなことを知る、その過程こそがいうなれば目的である、そんな風にボクは思うから、自分の人生は徒歩旅行でありたい。そう思いますがみなさんはいかがでしょう?

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