オベンター

オベンター

オベンターって僕が最近考えた造語で、誰かのために毎日お弁当を作る人って意味です。
マメヒコには、お弁当クラブってのがあるんですよ。それで、僕は毎日このコロナになってから誰かのお弁当を作っているんです。仕事といえば仕事かもしれない。毎日その人のことを想像しながら作っていくのって結構な精神力が要ります。
お弁当クラブをやるようになって意外に思ったのは、店内でお弁当を食べる人がかなりいること。僕はお弁当はキッチンのないところで食べるものだと思ってたから、その理由を聞いてみたら、お弁当箱の中に小宇宙を感じていると。お弁当の中身をお皿に並べたら似て非なるものになると。なるほど、そういう小宇宙を作り出せるのがオベンターだよね。お弁当という箱の中に、自分で創作して小宇宙が広がるんだから創造主ってことだ。
僕は色んなものを創っているけど、お弁当も井川作品群だと、言ってくれた人がいた。お弁当を作るときには、敷居を作らないって決めている。その代わり、隣と隣の接している面がお互いに共鳴し合っても変じゃない味付けにしようと心がけている。見栄えがいいことと、口の中で食べた時の調和がとれているのは全く違うこと。だから、井川さんのお弁当だなってスタイルがあるんだと思う。飽きないように変えていきたいけれど、どこかに僕という人間性が出てるんだね。
全国でこれを聞いているオベンターの皆様、毎日ご苦労様です。自分のために作っている人もオベンターです。自分と向き合ってるわけだから。オベンターの気持ちや価値がなかなか評価されにくい時代ではあるけれど、そういう小さなことが案外最後はものを言うという気がとてもしている。人を育てるというのがこの世の中で最も難しいことでしょ。全国のオベンターの目に見えない信念や孤独が、人を育んでいると僕は思っているので、そういう自負を持って、明日も早く起きて、誰かのお弁当を作ってあげてください。

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