味噌汁
味噌汁というのは、南北に長い日本の叡智だなぁと思うんですよ。
ボクらが作ってる味噌汁は、昆布と煮干しがベース。昆布は専ら利尻のもので、北海道でしか採れない、北の海の出汁。煮干しは瀬戸内海の南のものを、腸だけとって出汁をとる。植物性の昆布と、動物性のたんぱく質の煮干しでバランスがとれている、この全く違うものを組み合わせて、ひとつのものにしていくというところが、調和を貴ぶ、日本らしい出汁だと思うんだよ。
これだけでは味噌汁にはならなくて、ここに野菜、山の出汁が加わることで、味噌汁は三角形になるんだよ。
山のものは、ジャガ芋、里芋なんかを入れると、いい出汁が出るし、大根、玉葱なんかは、とても甘い出汁が出るので、三角形になりやすい。
この三角形の味噌汁を作るというのが基本だね。
さらに、香りが立つものは、七味唐辛子、柚子胡椒、黒山椒、柚子の皮。夏なら、ミョウガ、紫蘇、葱をあしらいとして入れると四角形になるので、味噌汁は複雑な味わいになる。
味噌汁は、北のもの、南のもの、動物性、植物性、土の下にあるもの、上にあるもの、、元々違うものが、一つのお椀の中で、バランスと調和がまるで小宇宙になるかの様に組み立てられていて、素晴らしい飲み物なのだよ。これが日本人の考えたすごいことだな、と思う。
味噌そのものも、大豆と麹(米)が合わさっている。色んなヒトとの出会いがないと味噌汁は完成しないわけ。色んなヒト達が交流する中で、出会いをお椀の中に込めて、味噌汁にしてきた歴史があって、それがこれまで受け継がれてきたんだよね。
今のヒトは日々忙しくて、食事に割くエネルギー、意識、時間が少ないので、ご飯、味噌汁みたいな当たり前の食事が本当に美味しいということの奥深さについて、敬遠してしまうかもしれないけど、ボクのように、複雑なものが面白いと思ってる人間からすると、味噌汁というのはとても奥が深くて、なんか面白いなぁと、いつも思ってます。